お題で書く

□深夜の電話
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フィギュアのメンテを終えてさあ、寝ようか、というときにかかってきた深夜の電話。

誰だろうと携帯をとると見慣れた「10」の数字。


「もしもし?」
「えっ!?」

電話にでると相手の驚いた声が聞こえた。

「てめぇ、自分で電話しといて驚くんじゃねぇよ、だぁほ。」
「い、や。だって夜中だしでねぇとおもってた…すから。」
「起きてたんだよ。で、何のようだ。今から寝るんだけど。」
「あ、じゃあいいっす…」

何故か落ち込んだような後輩の声。

「いーから、話せ。これ部長命令。」
「……怒らないっすか?」
「あー怒んねぇよ。」
「先輩の声、聞きたくなったから…つーか会いたくなったから。」
「はぁ!?ちょ、おまえ、なにいっ!って舌噛んだし。恥ずかしくねーのかよだぁほ!」

後輩からの爆弾発言でパニクって舌噛んだ。

「怒らねぇっていっただろ!!」

照れ隠しで叫ぶ。

「うっせー!つーか夜中だ考えろ。あと敬語。」
「う、おう。悪かった、です。」

後輩を叱ることで俺もクールダウン。

「ん、でどーよ?声きけて満足か?」
「余計会いたくなった。今からそっち行っちゃダメっすか?」
「な、バカか!!時間考えろ!」
「そうっすよね…すんません。」

電話越しにシュンとしている後輩が見える。
なんかすっげー申し訳ない。

「あーもーっ!!わーったよ。今から行くからまっとけ。」

頭をがしがしとかき、出かける準備を始める。

「な、迎えに行く。先輩一人じゃあぶねーよ!」
「これでもバスケで鍛えてんだよ、大人しくなんか食いもん用意しとけ。あと布団。泊めろ。」

誰が後輩に守られるか。

「…おう。待ってる。」
「別に5分くらいじゃねーか。んな不満そうな声すんなよ。」
「んなことねー、です。それじゃ布団用意して待ってる。」
「おう、じゃあな。」

携帯を切る。
親は寝てるからリビングに書き置き。


行ってきます。


必要なものは全部あいつの家にある。
財布と携帯をもって家を飛び出す。



あいつの家は一人暮らし。気がねなく泊まれる。

ドアを開けたらおもいっきり抱きしめられた。




たった一本の深夜の電話。
それで家を飛び出してしまう俺は
きっとこいつに
溺れてる。

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