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□甘い眠り
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ふわりふわりと意識が浮上を始める。
―――あったかい・・・・・・
アリスはすぐ傍にある温もりに擦り寄る。そうすると、意識が再び眠りの中へ彷徨い出す。
すぐ傍の温もりと濃密な薔薇の香りがアリスを手招く。
―――もう・・・少しだけ・・・
アリスの体から力が抜け、彼女の意識は再び落ちていった。
そっと頬に触れられる感触。それに気づいて、アリスはゆっくりと目を開けた。
目の前には誰かの肌蹴た胸元が見える。
―――・・・?なんで・・・?
自分の置かれている状況がまだ飲み込めないアリス。
しばらくして、隣にいる人物から声を掛けられた。
「おはよう、アリス」
そして、そっと額に口付けられる。
「・・・・・・ブラッド・・・・・・?」
まだ半分夢の中にいるような、そんな声で彼女は隣にいるブラッドの名を呼ぶ。
「やれやれ。眠り姫には目覚めのキスが必要なようだな」
ブラッドはクスリと笑うと、今度は彼女の唇に口付けた。
アリスの目が一気に覚める。
「えっ?!なんでっ?!」
がばっと起き上がり、隣で横になっているブラッドを見下ろす。
ブラッドがにやりと笑った。
「ふむ・・・。いい眺めだな」
言われて、アリスは自分の体を見る。その顔が一気に赤くなり、ブランケットを掴んで引き上げる。
アリスはその身になにも纏っていなかった。
―――お、思い出した・・・!
前回の夜、アリスとブラッドは二度目の外出をした。そして戻ってきた二人は、それが当然であるかのように体を重ねた。
「・・・思い出したようだな」
「きゃっ!」
ブラッドは真っ赤な顔をしたまま固まるアリスの腰を抱くと、ベッドに押し倒した。
そのままアリスを抱きこんで楽しげに笑う。
あまりの恥ずかしさにアリスは逃げ出したい気分だ。
「ねえ・・・放して」
アリスがそう言っても、ブラッドはアリスを放さない。
「もう少し此処で寝ていきなさい」
耳元で聴こえた声があまりにも甘く感じて、アリスはぎゅっと目を瞑った。
心臓がありえない速さで鼓動を刻む。
「私はもう少し、君とこうやって眠っていたいんだ」
骨まで蕩けそうなくらい甘い甘い声で囁かれ、アリスは自分の負けを悟った。
「・・・・・・もう少しだけ・・・・・・よ?」
ブラッドの背に手を回し、アリスは小さく呟いた。