本棚

□snow falling
1ページ/2ページ


 二人が教会を出ると、外では雪が激しく降り始めていた。
 「これはまた・・・。随分と降ってきたものだな・・・」
 ブラッドが億劫そうに呟いた。 
 「どこかお店でも入って、様子を見てみる?」
 「・・・そうだな」
 ブラッドはアリスの言葉に同意する。
 二人で雪の降りしきる中歩いていると、一軒のカフェがアリスの目に留まった。
 「ブラッド。あそこのカフェにしない?あそこの紅茶、とっても美味しかったの」
 アリスがブラッドの袖を引く。
 ブラッドは頷き、二人でカフェに入った。


 店内に入ると、冷えて固まっていた体がゆっくりと解れていく。
 適当に空いている席に座り、メニューをひろげる。
 「ふむ・・・。なかなかにいい茶葉を揃えているようだな」
 ブラッドの目が輝きだす。
 アリスはそれを見て微笑んだ。
 「ここの紅茶なら、貴方も気に入るだろうなって思ってたの」
 二人はそれぞれ違った茶葉の紅茶を注文する。
 ふと、二人の間に沈黙が降りた。しかしそれは、心地のいい沈黙だった。
 会話はないけれど、どこかもっと深いところで繋がっている。そんな気分になる沈黙。
 ブラッドがゆっくりと腕を伸ばし、アリスの髪に触れた。
 くるくると指に絡めては放してを繰り返して遊んでいる。
 「・・・癖ついちゃうわ・・・」
 なんとなく恥ずかしくて、アリスは小声で言った。
 「いいじゃないか。・・・ああ、たまには髪型を変えてみるのも面白そうだな」
 ブラッドは楽しそうにくつくつと笑う。
 「面倒だから嫌よ。・・・私、あんまり器用じゃないし」
 「それなら、私がやってあげよう。多少なら出来るぞ」
 意外なことを言うブラッドに、アリスは驚いた。
 「なんでそんなことまで出来るのよ・・・」
 アリスが小さく溜息をついた。
 この男は何でもそつなく器用にこなしすぎると、心の中で呟く。
 そして、余計なことまで考えてしまう。
 今まで付き合った女性達にも同じことをしていたのかと。
 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ