本棚
□Le rhume
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秋の夜長に読書をしよう。
そう思い立ったアリスはストールとランタン、読みかけの本を持って広い庭に出た。
空には星が無数に輝き、細い三日月が浮かんでいる。
あまり人の来ない奥まった場所にある大木の下にランタンを置き、その横に座る。
ストールを羽織ってみるが、それでも少し肌寒いかもしれない。
「・・・今から戻るのは面倒よね・・・」
アリスはそう呟いて本を開いた。
本を読み始めれば、寒さなど全く気にならない。
そのままアリスは本を最後まで読みきるのだった。
部屋に戻り眠っていたアリスは、咳き込んで目が覚めた。
激しい咳がなかなか止まらない。
咳をする度に身体中が痛み、ぞくぞくとした寒気が背筋を這った。
(風邪・・・ひいちゃったのね・・・)
ようやく咳が止まり、肩で息をしていたアリスはぼんやりと考えた。
薬を貰いに行こうにも、身体中が痛くて動けそうにもない。
アリスはもぞもぞと毛布と上掛けをかけ直すとその中で丸くなり、意識を失った。
それから数時間帯後、仕事に区切りをつけたブラッドが廊下を歩いていると、不安そうに何かを話している部下達がいた。
「なんだ?何かあったのか?」
ブラッドが声をかけると、部下達が寄ってくる。
「お嬢様が〜お食事にいらっしゃらないんです〜」
「もう起きていらっしゃるはずなんですけど〜・・・。お部屋に行っても返事がなくて〜」
ブラッドは少し考えてから言った。
「お嬢さんのことだ。もう何処かに出掛けているんじゃないのか?」
ブラッドの言葉に部下達は首を横に振る。
「お嬢様は〜八時間帯前にお部屋に戻ってから〜外出はされてません〜」
それを聞いて、流石のブラッドも不安を覚える。
「・・・少し様子を見てこよう」
ブラッドはそう言って、アリスの部屋へと向かった。
コンコン。
ドアをノックしてもアリスの返事はない。
だが、部屋の中には人の気配がある。
「お嬢さん、私だ。開けてくれないか?」
そう声をかけても、やはり返事はなかった。
ブラッドは静かにドアノブに手を掛ける。
鍵はかかっていたが、屋敷の主であるブラッドには何の意味もなさない。
ブラッドはゆっくりとドアを開けた。