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□甘くて、甘過ぎて、胸が痛い
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「アリス、おいで」
ベッドの端に腰掛けたブラッドが、アリスに手を差し出す。
アリスは迷いながらその手を取る。
ブラッドはそのまま彼女を抱き寄せ、アリスはブラッドの胸に飛び込んだかのような形になった。
顎を掴まれ、そのまま貪るような口付けをされる。
薄く開いたアリスの唇の隙間から、ブラッドの舌が入り込む。
「ふ・・・ぁ・・・」
アリスが甘い声を出せば、ブラッドは満足そうに目を細めた。
そして、ゆっくりと彼女のドレスを乱し始める。
(・・・優しくなんてしないで・・・)
アリスは心の中で呟く。
優しくされればされる程、アリスは苦しくなる。
この行為に愛なんてないから。
ただ身体を繋ぐだけの爛れた行為でしかないから。
「・・・アリス」
唇を離したブラッドがアリスを呼ぶ。
アリスは答えずに、ブラッドにしがみついた。
滅多に甘えてこないアリスのその仕草に、ブラッドはほんの少し驚いた顔をした。だが、すぐに口元に笑みを浮かべ、アリスの髪を優しく梳いてやる。
「・・・どうした?君が甘えてくるなんて、珍しいじゃないか」
ブラッドのその言葉にも、アリスは何も答えない。ブラッドは僅かに眉を寄せた。
どうもアリスの様子がおかしい。
ブラッドはやんわりとアリスの肩を押し、距離をとる。
アリスは今にも泣きそうな顔をしていた。
「何があった?」
尋ねるブラッドの声には、ひんやりと冷たいものが混ざっている。
「・・・何もないわ・・・」
アリスは今にも掻き消えそうな声で答えた。
(・・・貴方に優しくされるのが辛い・・・)
ブラッドの纏う空気が冷たくなる。
「・・・何もない・・・ね」
ブラッドが小さく舌打ちする。
「君は本当に面倒だな」
その言葉に、アリスの身体がぴくりと震えた。
涙が溢れそうになるのを必死で堪える。
「・・・嫌なら部屋に戻るわ」
声が震えないように力を入れて言うと、ブラッドは乱暴にアリスをベッドに押し倒した。
「・・・全く、手のかかるお嬢さんだ」
ブラッドはアリスに覆いかぶさると、甘い口付けを落とした。