本棚
□猫はお好き?
1ページ/3ページ
「たまたま庭に入り込んだ猫と遊んでたってだけで、ねちねち文句言うなんておかしいでしょう!?」
秋の夕方の薔薇園はより一層、紅が映える。
そんな中でアリスは遊びに来たビバルディとお茶をしていた。
ブラッドは仕事であと一時間帯は帰ってこない。
「ほんに・・・心の狭い愚弟だこと。猫に嫉妬など馬鹿馬鹿しい。お前も、あんな愚弟より猫のほうが良いじゃろう?」
「猫のほうが大人しいし、可愛いわ」
ビバルディの言葉にアリスは即答する。
ビバルディもティーカップを傾けながら頷く。
「しかし猫といえば・・・」
ティーカップをソーサーに戻し、ビバルディはじっとアリスを見つめた。
「わらわはたまに、お前のことが猫のように思えるぞ」
アリスがきょとんとした顔をする。
「自由気ままにわらわ達の所へ来てはふらりと帰って・・・。猫のように冷めたところもあるしな」
「・・・そうかしら?」
クッキーを齧りつつ、アリスは首を傾げる。
すると、ビバルディは何かを思いついたのか妖しい笑みを浮かべた。
そしてアリスの隣にやってくると、耳元で囁く。
「なあ、アリス。面白い遊びをしよう」
その言葉を聞いたアリスの背を、冷たい汗が伝っていく。
頭の中で警鐘がガンガン鳴っている。
危険すぎる。逃げなければいけない。
そう思いながらも、ビバルディの妖しい魅力には抗えない。
「お前はいい子じゃな・・・。大丈夫、痛くはないからね・・・」
アリスの意識が朦朧としてくる。
(まずい。いろんな意味でまずいわ・・・)
そう思いながらも、ふわふわとした浮遊感に身を任せる。
そして、それは唐突に終わりを告げた。
「ほら、お似合いじゃ」
楽しそうなビバルディの声に我に返るアリス。
「・・・お似合いって・・・何が?」
目を瞬かせながら、アリスは尋ねた。
ビバルディは何も言わず、笑顔でアリスの頭を撫でた。
・・・撫でたのだが、何か違和感がある。
アリスは恐る恐る自分の頭に手をやり、それの存在に気付いて青くなった。
「・・・・・・ビバルディ・・・・・・」
「ああ、お前にはよく似合っているよ」
楽しそうに言って、ビバルディは更にアリスの頭を撫でる。・・・正確には頭に生えた耳を。
アリスの頭には、いつの間にか可愛らしいネコ耳が生えていた。
「なんてことしてくれるのよっ!早く元に戻して!!」
アリスが涙目で言った途端、時間帯が変わり昼になる。
「ああ、時間帯が変わったな。わらわは城に戻る事にしよう」
椅子から立ち上がるビバルディの腕を、アリスは必死に捕らえた。
「戻してから帰ってよ!」
「大丈夫じゃ。数時間帯で戻る。それで愚弟を驚かせておやり」
にっこり笑ってビバルディはアリスの手から腕を抜くと、そのまま城へと通じる道を足取りも軽やかに歩いていく。
残されたアリスはただ呆然とするしかなかった。