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□Embrasse-moi!
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アリスはブラッドのベッドの上で上掛けに包まり、ぼうっとしていた。
いつものようにブラッドの部屋に引き摺り込まれて互いの熱に溺れ始めたのは数時間帯前。そうしてアリスが目覚めた時、ブラッドは隣にいなかった。
眠る前に幹部会があるというような話をしていたのを思い出す。
仕事なら仕方ないと思ったが、それでもどこか寂しいものを感じる。
普段のアリスならさっさと身支度をして部屋に戻るか出かけるのだが、今回はそんな気にはなれなかった。
身体が怠いというのもあるが、このままブラッドの香りに包まれていたいというのが本音。
アリスでも稀に、人恋しくなることがあるのだ。
「早く帰ってきなさいよ・・・」
そう呟いて、アリスは目を閉じた。
薔薇園でのやり取り以来、アリスは少し素直になったとブラッドは思う。
そう思うのはブラッドがアリスに甘いせいだろうか。
目の前で幹部達が話すのをぼんやり聞きつつ、ブラッドは溜息を吐いた。幹部達の声がぴたりと止む。
「・・・監視だけは怠るな。そうだな・・・後はお前が判断して対処しろ」
そう言ってブラッドは一人の幹部に視線を投げた。視線を向けられた幹部は頷いて応える。
ブラッドはそれを見届けてから部屋を出た。その後をエリオットが追う。
「ブラッド。あれで良かったのか?」
しばらく歩いてからエリオットがブラッドに尋ねる。
「ああ。あいつなら上手く対処できるからな」
「そうじゃなくてさ・・・。最近、あいつのこと疑ってる連中がいるって話、ブラッドも聞いてるだろ?」
エリオットが小声で言えば、ブラッドはつまらなさそうに言った。
「有り得んな。あいつは私に歯向かうほど馬鹿じゃない。むしろ、そんな事を言っている連中の方が怪しいくらいだ」
「・・・まあ、確かにそうかもな」
二人は廊下を歩きながら、簡単な仕事の打ち合わせをする。
「んじゃ、俺は見回り行ってくるな」
エリオットはそう言って玄関ホールへ向い、ブラッドは自室へと向かう。
自室の前まで来て、ブラッドは首を傾げた。
部屋の中に人の気配がある。
そっとドアを開けて中に入ると、ベッドの上で眠るアリスの姿が目に入った。
(自分の部屋に戻っていなかったのか・・・)
珍しいことがあるものだと思いながら、ブラッドはベッドに近づいた。
上掛けにすっぽりと包まって眠るアリスは、年相応の少女に見える。
ブラッドはベッドの端に腰掛けると、アリスの髪を撫でた。
「ん・・・」
それに気づいたのかアリスの目がゆっくりと開かれ、ブラッドの方に視線を向ける。
「済まない。起こしてしまったな」
ブラッドはそのまま優しくアリスの髪を撫で続けながら声をかけた。