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□Le minuit 〜Alice ver 1〜
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「全く・・・面倒な性分だな。とりあえず、新しい紅茶を淹れよう」
ブラッドはそう言って、空になった私のティーカップに新しい紅茶を淹れてくれた。
ふわりと漂う花のような香り。温かい紅茶を一口飲むと、少しだけ落ち着いた。
・・・こういう心配りも出来る男なのだ。このブラッド=デュプレという男は。
だからこそ、女性に大層もてる。
そんなことを思っていると、ブラッドがだるそうに口を開いた。
「ああ。そうだ、お嬢さん」
振り返ればだるだるとソファと一体化しそうなほどだるそうにしている男が、何かを企んでいるような目で此方を見ていた。
「実は、引越しの直後にはクローバーの塔で開かれる会合に出席しなければならないというルールがあるんだ。君にはこのルールは適用されないが、気晴らしに一緒に出席してみないか?」
・・・「出席してみないか?」ですって?この男、どうせ私に拒否権など与える気はないくせに・・・。
何よりも雄弁にその瞳が、「出席しろ」と言っている。
「会合?」
とりあえず、会合がなんなのか聞いてみる。
「そう。何も纏まらず何も決まらない。ただ集まることに意味がある・・・・・・。そんな催しだが、役持ちは全員強制参加で会合中はクローバーの塔に滞在することになる。・・・・・・君が居ないと退屈で死んでしまいそうなんだ」
「・・・・・・私の気晴らしじゃなくて、貴方の気晴らしの為に誘われている気がするんだけど?」
やっぱりこうなるのか。私はブラッド専用の玩具ではない。
「まあ、そうともいうな・・・。会合に出席するなら服を見繕わなくてはな。スーツ着用がルールだから。・・・ふむ、楽しみが増えたな」
にやりと笑うブラッド。
私は着せ替え人形でもない。が、どうせ拒否権はないのだから諦めるしかない。
私は溜息をついて頷いた。
「私に拒否権はないのね・・・。いいわ、行ってあげる」
真っ直ぐにブラッドを見つめて言うと、彼は満足気に微笑んだ。
・・・私はたまに、ブラッドという男がわからなくなる。
彼はどうして私を甘やかすのか。(まあ、セクハラされることの方が多いが)
どうして私が会合に出席すると言っただけで、こんなに満足そうな顔をするのか。
本当にわからない。
第一回目の会合期間が始まった。
ハートの国に居た頃は夢の中でしか会えなかったナイトメアがこの会合の主催者。
あのへたれにそんなものが勤まるはずはなく、開始早々から会場内は荒れる。
時折ナイトメアが吐血し、彼の部下が世話をする。その繰り返しだった。
それに此処に居るメンバー達は大人しく人の話を聞いていられる様な人間ではない。
私はすっかり疲れてしまった。疲れるほど何かをした訳ではないけれど。
今の私はブラッドが見立てたという黒いドレスを着ている。
スーツじゃなかったのかとつっこんでみたが、「これの方が似合うから」と無理やり押付けられた。
まあ、色もデザインも大人しく、私好みではあった。
しかし、なんでブラッドは私の服のサイズを知っていたんだろう?
次第に周囲の喧騒が大きくなってくる。
「・・・・・・なんだか・・・・・・ものすごく無意味ね・・・」
つい、本音が漏れてしまった。
隣で眠たそうにしていたブラッドが小さく笑う。
「この世界は無意味なものばかりさ。適当に聞き流してしまえばいい」
そう言って、彼は欠伸を噛み殺す。
今の時間帯は昼だ。
普段のブラッドなら眠っている頃だろう。