本棚

□ある日の風景
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 時間帯が二度変わったところで、ブラッドの仕事に区切りがついた。
 アリスは本を半分ほど読み終わっている。
 この辺りで休憩を入れようと、ブラッドはベッドの上に座るアリスへ近づいた。
 「お嬢さん」
 返事が返ってくることはないと分かっているが、一応声をかけてみる。
 案の定、アリスから返事はなかった。
 アリスは本に夢中になると、周りのことにまで意識を振り分けられないのだ。
 それを知っているブラッドは特に気を悪くすることもなく、アリスの傍から離れて部屋の入り口へ向かう。
 ドアを開けて、たまたま通りかかった使用人に紅茶を持ってこさせる。
 カップやポットの載ったトレイを受取り、ブラッドは部屋の奥へ戻る。
 執務机の上にトレイを置き、紅茶をカップに淹れる。
 カップの内の一つを持って、再びアリスの傍へ行く。
 「アリス」
 今度はアリスの意識を此方へ向けるため、名前を呼んだ後に耳元に息を吹きかけた。
 「きゃっ!」
 アリスが飛び上がらんばかりに驚き、元凶のブラッドを見た。
 「な・・・な・・・」
 「お茶が入ったぞ」
 顔を真っ赤にしたアリスに、ブラッドは何事もなかったかのようにティーカップを差し出した。
 「もうちょっとマシな気の引き方はない訳!?」
 「この位でなければ、君は本から此方に意識を向けてくれないだろう?生返事をされて紅茶が冷めたらもったいない」
 アリスは仕方なく本に栞を挟み、ブラッドからティーカップを受け取った。
 立ち上る香りを吸い込み、それから一口飲んでみる。
 「美味しい・・・。今日はシッキムなのね」
 ブラッドが微笑む。
 「お嬢さんは物覚えがいい。・・・色々と」
 含みのある言い方をして、ブラッドも紅茶に口をつける。
 しばらく無言で紅茶を楽しんでいたが、突然、ブラッドが昼寝をしたいと言い出した。
 「こんな明るい時間帯に起きているなど耐えられない。お嬢さんも一緒にどうだ?」
 アリスはじと〜っと疑いの眼差しを向ける。
 「添い寝ぐらいいいじゃないか。今のお嬢さんに無体な真似はしないよ。・・・たまにはそれだけというのもいいだろう?」
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