本棚

□深夜のお茶会
3ページ/3ページ

 ブラッドが小さく溜息をついた。
 「・・・まさかそんなことを言われるとはね・・・。予想もしていなかったよ」
 「退屈しなかったでしょ?」
 「・・・本当にな・・・」
 二人はしばらく無言で紅茶を飲み、紅茶を飲み終わってもその場から動かない。
 「・・・ねえ、帽子屋さん」
 ボリスが沈黙を破ってブラッドを呼んだ。ブラッドが眼差しだけをボリスに向ける。  
 「絶対に逃がさないでよ」
 その言葉に、ブラッドはにやりと哂った。 
 「私は欲しいものはどんな手段を使っても手に入れる主義だよ」 
 ブラッドの答えに、ボリスは微笑んだ。
 「さすが帽子屋さん。じゃ、俺も全力で手を貸すよ。・・・美味しい紅茶をご馳走様」
 ボリスが立ち上がり、来た時同様に足音も立てずに去っていく。
 ブラッドはその背を見送りつつ、口元に笑みを浮かべた。
 「さて。これで準備は整ったな・・・。覚悟していなさい、お嬢さん」
 ブラッドの囁きは夜の闇に溶けて消えた。



 
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ