贈り物

□忘れない
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オレは、
世界中で誰より大事な女に
傷をつけたことを一生

一生忘れない…――



「あっちー…っ」

流れ出る汗を拭う

『ちょっとぉーっ!
二人共歩くの速すぎ!!』

後ろに振り返るとルーシィが荒い息をはいて歩いてる

「お前な…
山上るのになんでヒールある靴にしたんだよ」

半ば呆れた声でオレは言った

『言っとくけど、あたし今日まで仕事内容知らなかったのよ…?』

不満そうに唇を尖らせた

「たくっ…」

オレはもといた場所からルーシィの所まで戻り、手をさしのべる

「ほら…っ
引っ張ってやるから手出せよ…っ」
『あ、ありがとう…っ』

最近付き合い始めて
(それも仲間には秘密で)、
オレ達はまだ手を繋ぐとか
慣れていなくて
照れくさかった

「…つまんね…っ」

ナツが何か呟いた
ま、気付かないフリしとくか

『で、でもグレイに迷惑かかっちゃうから
もう少しゆっくり歩いてくれればいいわよっ』

たぶんルーシィなりの気遣いなんだろう
少し寂しそうに両手を左右に降る

「…わかった」

名残惜しい…
繋いだ手をあっさり離したくなくて
でも離さなきゃならなくて
離した

「おーいっ
ルーシィこれ見てみろよ!!」

前方からナツの声がして見ると
しゃがんで何かを指差していた

『何よもう〜っ
今行くわよっ』

仕方ないなと言わんばかりの顔をしたルーシィ

「……」

でもどこか嬉しそうな…
そんな顔だった

「早く来いよルーシィっ!」
『はいはい、どれどれ…
って…カエルじゃない…』
「おうっ!!
ルーシィに似てんだろ!!?」
『う、嬉しくないんだけど…っ』

怒っていても
やっぱり楽しそうだ
何て言うんだろうな…

「……っ」

どうしようもなく…
疎外された気持ちになる

『もうっ
ねぇ、グレイ…っ!
このカエルあたしと似てる?』

ルーシィが指差したカエルはナツに捕まれていた

「……」

なんでか知らないが
凄くムカつく

「どうでもいいだろ
そんなの」

気づけば言葉は外に出ていた

『どうでもって…
確かにどうでもいいかもしれないけど
そんな言い方しなくても…っ』

ルーシィの視線がこっちに向いて
そしてオレは気づいたんだ
これは単なる嫉妬なんだと

「…っチ…ハァ
わりっ…
…頭冷やしてくる」

二人に背を向けて道を別れた

『グレイっ』

ルーシィの声がしたけど
あえて無視した…
きっと今、何を言っても
あいつを傷付けると思うから…

『グレイっ!!』
「……っ!」

ガシリッと腕を掴まれ
意識を戻すと河辺に来ていた

「……」
『ど、したの…?
なんか…っ、グレイ変だよ…っ』

きっとルーシィはここまでオレを追いかけたんだろう
息が切れてる

「なぁ…?」

そんなルーシィに
オレは思ってもないことを言ったんだ

「何しに来たんだよ?」
『え…っ?』

止めようとしても
口は止まることを知らない

「ナツと一緒にいればいいだろ?
ナツといた方が楽しいもんな?」
『え…っ
グレ、イ…?』
「つか、お前
本当は…」

それ以上は言うなっ!!

「ナツが好きなんじゃないのか…?」

言ってはいけないことを
オレは言ってしまった

『……っ!』

パシンッと乾いた音が響いた

『……っ
グレイ…っ、ずっとそんな風に思ってたの…?』
「……」
『あたしがナツを好きだって…っ
思ってたの?』
「……」
『…っ
あたしは…っ
あたしの気持ちは…っ
グレイに伝わってなかったのね…っ』

顔をあげて
キッと睨まれる

『バカッ!!』<ザバッ>

ルーシィの声と
ほぼ同時に
河の水が沸き上がり
咄嗟にルーシィの手を掴もうとして

『きゃっ…!』

遅かった…っ
水飛沫の中に連れ去られたルーシィを追って魔法を繰り出す

「アイスメイクっ…!
ランスっ!!!」

氷の槍が水飛沫の中に入っていった
水飛沫がだんだん弱まり、
ソレは姿を現した


 
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