贈り物

□Sister's Panic
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真っ昼間の【妖精の尻尾】は騒がしく、その中である男女が一緒にいた。

『ちょっとっ!!それあたしのっ』
「いいじゃねーか、減るもんでもねーし。ケチくせぇ」

どうやら男の方が女の飲んでいたレモンティーを飲んだようだ。女…―ルーシィは"減るわよっ!量がっ"と怒りながらもその顔はまだ春に入ったばかりだというのに赤みを帯びていて、"照れている"という言葉がしっくりきた。

「クックックッ」

男…―グレイも普段あまり見せないような笑顔を浮かべ笑う。相思相愛であろう二人は周囲から見れば"男女の仲"だが、実際は付き合ってもいない。
互いが互いを意識してはいるがまだ友達止まりである。

『あっ、だから飲むなぁーっ』
「へいへい」

そんな仲睦まじい二人に嫉妬の眼差しを向ける者、好奇な眼で見る者様々であるが…
『『……』』

ウズウズと落ち着きなく二人を見る者がいた…



ある二人の女が先ほど紹介したグレイとルーシィを見つめている。
そうこの二人がウズウズと落ち着きのない様子でグレイとルーシィを見つめていた張本人たち。

『あーっ、もうっ!
なんで"ルーシィのだから飲みたかったんだ"とかの口説きの一つも言わないのっ!?
グレイのヘタレっ!』

声を抑えながらも眉をつり上げ悔しそうに両拳を握る女…―リサーナ

『うーん。ちょっと今のは惜しかったわねぇ』

妹程ではないが残念そうに眉を下げ苦笑いを浮かべる女…―ミラジェーン。
二人は姉妹であり、他人の恋愛事に首を突っ込むのが好きなようで今のターゲットであるグレイとルーシィの仲を進展させようとするが中々うまくいかないらしい。



場面は変わり、そんな二人に気付くこともなく、グレイとルーシィの二人は会話を進めていた。

『だーかーらーっ
それはあたしが持ってきたクッキーっ!』
「へいへい」

どうやらレモンティ-の次は持ってきたクッキーをグレイによって食べられたようだ。

『で?』
「は?」
『"は?"じゃないわよ。
えっと、その…味…は…?』

頬を染めグレイから視線を反らすルーシィ。
正にその姿は乙女そのもの。

「普通にうめぇよ」

そんなルーシィの様子に気付いていないのかグレイは素朴な感想を言いクッキーを食べ続ける。
なんとも乙女心のわからない奴である。

『そ、そうっ』

しかしルーシィはただ頬を染め嬉しそうにはにかんだ笑顔をグレイに向けていた。
"それでいいのか"とツッコんでやりたい気持ちはさておき。

『じ、実はね?
そ、それあたしのて、手作りなんだぁー…っ』

ぎこちなく"えへへっ"と笑い。
これまたぎこちなくグレイを見るルーシィ。

「へー…。」

ただ一言…というか、ただの感動詞を言っただけである。
そんなグレイに鋭い視線が突き刺さるがこれまた気付いていないのか、またグレイが口を開き。

「今度…また何か…作ってくれよ…」

視線は交わらずにグレイはただそっぽを向いているが耳が少しいつもより赤く、それを隠すように髪をかく。

『う、うんっ!!』

それはそれは眩しい笑顔であった。



『何が"普通にうめぇけど"よっ!
どう見たってそのクッキー手作りじゃないっ
もっと気の効いた感想言えないわけ!?』

これまた場面が変わり、リサーナ&ミラジェーンsideである。

『あぁっ、もうグレイじゃなくてナツに…っ、いやいやそれはダメだ。あっちの方がもっとめんどくさい…っ
てか、なんでウチのギルドにはろくな男がいないのよ〜っ』

未だに眉をつり上げたリサーナはギルドの男たちをボロクソ言っている。

『まぁまぁリサーナ。
グレイはあんなだけど、ルーシィも気にしてないみたいだし、それよりもなんだか嬉しそうだしいいじゃない。』

リサーナと比べれば言葉は優しいが手に持っているスプーンが曲がっていたのは気のせいではないだろう。

『あ〜っ、照れてるルーシィ可愛い…っ
あたしが男だったらなぁ』

うっとり頬を染めて熱くルーシィを見ているリサーナ。
…あえて何も言わないでおこうと思う。

『って、あーっ!!
あのグレイの態度何!?ルーシィが手作りってわざわざ…っ』

ガタッと席を立つリサーナの背後には見えるはずのない業火が見えた、が

「今度…また何か…作ってくれよ…」

というグレイの一言により消火されたようだ。

『あらあら』

そしてミラジェーンの持っていたスプーンは見事二つになってしまっていたが表情は優しげだ。

『たまにはやるじゃんっ』

さっきまでの殺気はどこへやら。
ニヤニヤとした笑みを浮かべるリサーナ。

『でもまだまだね』

スゥと眼を開くミラジェーン。
そう…これはまだ前置き、いや始まりにすぎないのだ。
この二人の"暴走"が始まるのはこれからである。

 
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