贈り物

□欲張りな幸せ
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春独特の柔らかな日射しと柔らかな身体を抱き締めた。

『ヘヘっ』

小さな笑い声が聞けたことが嬉しくて抱き締める腕にキュッと力を込めた。

『んふふ』

一々聞こえてくる"嬉しい"という笑いに"あぁ、幸せだ"と心の底から温かな感情が浮き上がってくる。

「ルーシィ…」

柔らかな日射しを浴びて輝く薬指にはめられた指輪はルーシィとの約束の証…―

『うふふっ
今日は甘えたい気分なの?』

少し意地悪な問いかけの後に
"あたしは甘えるのも甘えられるのも好きだからいいんだけど"
と付け足すように加え、クスクス笑う。

「悪いか?」
『ううん。ぜーんぜんっ』

"むしろ嬉しいわ"とキュッとオレの腕を抱き締めるルーシィ。

「好きだ…」
『うん。
あたしもジェラールが好きよ…。』

二人黙って抱き締め合う。
嬉しいのにどこか不安に押し潰されるような恐怖が蠢く。

『あのね…』

そんな沈黙を破るのはいつもルーシィだ。

『あたし…っ、ジェラールとずっと…っ』

震えるルーシィの顔を此方に向かせ、その艶やかで魅力的な唇を奪う。

『ふ、ん…っ、ぁ…』

ルーシィの舌を絡めるように簡単には彼女の不安は拭えない。
オレ自信の不安も…

「……―っ」

出来ることなら不安も恐怖も全てのモノをお前から取り除いてやりたい。
だけど…

『…っん!』

オレにはそれが出来ない。
それが無性に腹立たしくてならない

『ん…っ、ちょ、はぅん…っじぇ、ジェラールっ』

けして強い力ではないけれど、肩を押され唇が離れる。

「なんだ」

せっかく味わっていたのに…

『あの…、なんか怒ってる?
な、なんというかその…っ』

"き、キスがい、いつも以上に…っ激しいから…っ"と両頬に手を当て顔を赤くするルーシィ。
恥ずかしいのなら言わなければいいのにと一瞬思ったがすぐにその考えは却下された。

「いや、ただ…」

なぜなら、こんな照れた顔もオレは好きだから

「自分自身に少し苛ついただけだ。」

優しく包み込むように抱き締めれば、優しい匂いに包まれ、頬が緩むのを感じた。

『ひゃ…っ、く、くすっ、ぐったい…っわよ』

怒っているのに優しく嬉しそうな笑い声。
あぁ…幸せだ。

「ルーシィ」

ルーシィの白い腕に手を滑らせ左手を握る。

『もうっ』

"仕方ないな"と言うかのようなため息。

「諦めろ。」

これはルーシィの"甘えていいよ"という合図。

「ルーシィ…」

お揃いにはめた指輪をなぞると不思議と自分の指輪よりも輝いて見えた。

「ルーシィ、オレは幸せだ」
『へ?』

お前と過ごしたこの時間はオレの宝物で"幸せ"だ。

「会えない時間の方が確かに勝るが、お前に出会えた時、オレはどうしようもない幸せを感じる。」

ルーシィが手を握り返したことで"あたしもだよ"とルーシィが伝えてきていることがわかった。

「たまにどうしようもない不安や恐怖を感じる時があっても、オレはお前を思い出す。
お前の笑顔をきっと一番最初に頭に浮かべるだろう。」

今も目を閉じればお前の笑顔でいっぱいだ。

「だからお前も、寂しい時や不安な時…頭にオレを思い浮かべてほしい。
そして出会った時にはオレはお前に愛を送り、お前もオレを愛してほしい。」

自分で言って、なんと欲張りな願いなのだろうかと心の中で苦笑を浮かべた。

『バカね』

すると先ほど触れていた柔らかなソレがオレの口に触れた。

『いつだって、どこへ居たって、あたしはあんたが好き。愛してる。
あんたを愛さない時なんてないんだからっ』

目の前には顔を真っ赤にして上目遣い(睨んでる)をするルーシィ。
(正直にいえば可愛すぎる。)

「そうだな。」

嬉しくてルーシィを抱き締めた。

「こんなに幸せとは欲張りなものなんだな。」

お前に出会わなければ知り得なかった知識。

『そうよ。
幸せは"欲張り"なのっ』

お前に出会わなければ知らないままだった人の温もり。

「欲張りついでに強欲にもなってみるか?」

きっとルーシィから見ればオレは意地悪な表情をしているんだろう。

「…子供が欲しい」

お前とオレの…子供が

『……―』

さて目の前で目を見開いてる女はなんと返事を返すのだろうか。
この返事を待つのもまた"幸せ"なんだろう。


欲張りな幸せ


(ば、ばば、バッカじゃないの!?)
(失敬な。オレは本気だ)
(だ、だだだっ、て…っ
ま、まだ心の…っ、ていうかまだ結婚だって…っ)
(じゃあまずは結婚からか…)




・終わり・
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