贈り物

□あたしの宝物
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あたしとグレイによく似た一人息子は好奇心旺盛で天真爛漫という言葉が何より似合う。
あたしとしてはそんな風に育ってくれたことを嬉しく思っていたけれど…

「あ、そだっ!
母ちゃんは父ちゃんのどこが好きで結婚したんだ?」

今日だけはそれを深く悔やむわ。

『え…っ?
な、なによ…っ、いきなり』

平静を装うために自分の特等席である椅子に腰かける。

「いやぁー、ちょっと気になったんだよっ
で、どこが好きで結婚したんだよ?」

…よし、グレイはいないわね…っ

『そ、そりゃ…っ、ぜ、ぜぜ全部よ…っ』

あぁ…、なんというか無意識に人を動揺させるような事を言うところ…グレイそっくり…
嬉しいような、嬉しくないような…微妙なところね。

「"全部"じゃわかんねぇよっ
強いて言えばっ?」
『えっ?…う〜ん』

悔しいけどこれで納得しないのはあたし似、よね…

『そうねぇ…』

目を閉じて考える。そうすれば思いの外答えは表れてくれた。

『優しいところ…かな?』

あー、なんか照れるな。こんなことグレイにも言ったことないし…っ

「優しい…?」

すると首をこれでもかってくらい傾げるアルイ。
それが面白くてクスクス笑ってしまうと、拗ねたように"な、なんだよっ"とそっぽを向いてしまった。

『あっ、ううんっ
違うの…っ』
「違う…って何が」
『首を傾げる仕草がグレイに似てて…っ』

たまにグレイが首を傾げる時とあまりにも似ていて、やっぱりあたし達の子供なんだなって思った。

『あ、そういえば。
一時からジュリちゃん達と遊ぶ約束してるんじゃないの?』

ただいまの時刻12:14

「あ、やっべ…っ!!」

時計を見て慌てるアルイにまた笑みが溢れた。
ちなみにジュリちゃんって言うのはジュビアとリオンの娘さんでアルイと幼なじみなの。
あたしのカンでは将来はアルイとジュリちゃんは一緒になると思うのよねぇ

『そんなに急がなくても間に合うわよ?』

わざとそう言えば

「ジュリのやつ向かえに行かないと後でうっせぇんだよっ」

と…。
まぁ、確信があるわけじゃないけどアルイはジュリちゃんのこと好きなんだろうし、ジュリちゃんも…ね。
相思相愛、めでたいじゃないの。

「んじゃ、いってきまーすっ」
『いってらしゃいっ
ちゃんとジュリちゃんと帰ってくるのよーっ』

言わなくても帰ってくるとは思うけど
 
「わかってるーっ」

少し照れたような横顔がグレイに少し似ていて、胸の内がジワジワ温かくなってくる。

『将来はあたしも姑かぁ…』

そんな一人言を溢しながら、寝室に足を向ける。

『そうなる前に』

少しでも夫に甘えないと、ね…?

「スー…」

寝室の扉を開ければ、ベッドに仰向けに寝転がるグレイ。

『…もうっ』

昔よりは幾分か顔だって体だって大人になったのに、寝顔だけは全然変わらないんだから。

『…ふふっ』

もう一度グレイの髪を撫でて、隣に寝転がる。

『グレイ…』

普段は子供の手前、甘えられなかったりする。だからアルイの前じゃグレイを怒ってばっかり。
だけどね…グレイ…

『愛してる…』

アルイもグレイも愛してる…。
世界に2つとないあたしの宝物。

「オレも、愛してる…」

ギュッと抱き寄せられる。

『うん、おやすみ…』
「おやすみ…ルーシィ…」

二人一緒に夢の中へ…
夢の中でもグレイとアルイ…二人と会えるといいな…


あたしの宝物

 
(母ちゃ…―)
(アルイー?何固まって…)
((……))
((スー…スー…))
(ジュリ)(アルイ)
((…シー…っ))


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