贈り物
□未来で逢いましょう
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『ちょ…き…て…っ』
ん…っ
あれ、なんでオレ…こんな真っ暗闇にいんだろ…
あ、そっか仕事先で崖から足滑らして…
じゃあ、ここは天国…?
「お…っ、だい…‥か…っ」
つか天国って暗いのか?
しかも、なんか聴こえるし、ぶっちゃけ地獄…
『起きなさいっ!!』
ガンッと頭を鈍器で殴られたような感覚。
ジワジワとその痛みが広がり
「い…っ!!?」
オレは起きた。というか、起こされた。
「おいおい…、殴ることないだろぉが…っ」
『なによ、グレイ。
こんな雪山の中このまま寝かせてたら逆に死ぬじゃない。』
痛みに頭を抑え、悶えるオレを他所に二人の男女の声。
きっと会話からして女の方が殴ったんだろう。いてぇよ…っ
『てか君、大丈夫?』
"頭の痛みさえなけりゃ全然大丈夫だよ"と皮肉を言ってやりたいけど、助けられたわけだしそれは言ってはいけないんだろう。
「おい、お前大丈夫か?」
黙ったままのオレを心配したのか男の方が声をかけてきた。
オレがその問いに頷けばまた女と話始める。
「こいつ一人置いてくわけにいかねぇし…。」
『いっそのこと一緒にギルドまで連れて行く?』
どうやらオレの今後を話し合ってくれてるらしい。
けどジュリも近くにいるだろうし大丈夫と言おうとして、オレは初めて男女の姿を目に写した。
「か、ちゃ…とう…ちゃ…?」
『え…?』「あ?」
「母ちゃん…っ、父、ちゃん…っ」
オレの知る二人よりは少し若いけど、間違いなく母ちゃんと父ちゃんが目の前にいる。
『グレイが父ちゃん…?』
「ルーシィが母ちゃん…?」
けど、目の前の二人はオレがわからないのかお互いに指差しあって頭に疑問符を浮かべている。
『「…って」』
『グレイがお父さんっ!?』「ルーシィが母親っ!?」
まるで二人の間に子供(オレ)ができてないみたいな反応。
それがショックだったのか、オレは体をピクリとも動かすことが出来なかった。
『た、確かにこの眼のタレ目具合とか黒髪とか似てるかも…』
「目の色とこの眉の感じはルーシィに似てんなぁ…。」
まじまじと見つめられて、動かなかった体は解れたのか動いてくれた。
「そ、そんな見んなよ…っ」
なんかハズイ…っ
『ねぇねぇ、君名前は?』
「えっ、あ、アルイ…です…。」
なんとなく母ちゃん(?)には敬語を使ってしまった。
『じゃあ、ねぇアルイ、くん?
君は今が何年かわかる?』
「えっと…X799年、です」
『じゃあ、今がX786年だから…
あぁ、やっぱりね…』
「「……?」」
一人納得してる母ちゃんに首を傾げるとプッと母ちゃんが吹き出した。
『あはっ、あはははっ』
お腹を抑えて笑う母ちゃんにまた首を傾げると絶え絶えに母ちゃんが言った。
『ち、ちが…っ
あはははっ』
「お前なぁ…、笑ってちゃわかんねぇんだけどよ…」
どこか呆れながら言う父ちゃん。
なんかオレの知ってる二人じゃなくて"やっぱり他人のそら似か…?"と納得しようとする。
『いやっ、だって…っ
あまりにも似てるから…っ』
まだ笑う母ちゃん似の女の人。
何がそんなに面白いのかわかんねぇ。
『隣に並んでると本当に…っ
しかも、首を傾げるところなんてもろグレイそっくりよ…』
その言葉に目を見開く父ちゃん似の男の人。
つか、前にもこんなこと母ちゃんに…
て、あれ?今"グレイ"って言わなかったか…?
『アルイ…』
考えに意識を持っていかれていたオレは包まれるような感覚で意識を現実に戻した。
『未来で…待っててね…』
"アルイ"
もう一度そう呼ばれた時、オレの頭の中はまた真っ白になった。