小話

□ひとつ、ふたつ
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「いのはシカマルのこと何も分かってないね。」


中忍試験のときにチョウジから言い放たれた一言に私の思考は一時停止した。


私が、シカマルを何も分かって、ない?


まさかそんな、小さい頃からの近所付き合いで朝から晩まで一緒だったシカマルと私のことをそんなふうに言われるとは。


その時は軽く受け流したけど、その一言が深く突き刺さって鈍い痛みを時折示した。


どうしてこんな気持ちになるのか。


長年の仲を否定されたような気持ちになったからだろうか。


まあ私とシカマルは性格も性別も違うんだ。
途中でお互いが理解できない行動や発言もあるだろう。


チョウジはシカマルの一番の友達だし男同士だし…。


「ああっなんかイライラしてきた…。」


ベッドに横たわり天井を見つめながらごろごろと寝返りを打つ。


「ああー…私も男だったら良かったのかなあ…。」


そうしたらシカマルの一番の理解者になれただろうか?


「物騒なこと言ってんじゃねぇよ。」


はっとした瞬間、見上げる先には今の悩みの根源シカマルの顔があった。


「!!?シカマル…あんた、なんで…。」


「部屋のドア半開きだったぜ。一応女なんだからもっと気をつけろよな。」


「だっ、だからって!!ノックくらいしなさいよ!!」


「今更見られて困るものでもあるのか?」


「…ないけど…。」


確かに毎日のようにお互いの家に出入りしているのに何故私はこんな態度を取ったのだろうか?
不意打ちだったから?
シカマルのことを考えていたから?


「…そういやさっき何で男になりたいとかつぶやいてたんだ?」


「!あ、あれは…。」


あんたの一番の理解者になりたかったから…なんて言えない。


「お前が男になったらただでさえ怪力なのに更にひどいことになりそうだから俺は勘弁だな。」


「なっ…うるさい!!」


近くにあった枕をシカマルに投げつけた。
ぼすっと鈍い音をたてシカマルの顔にまくらがめり込んだ。


「イテ…」


「あんたが失礼なことばっか言うからでしょ!!っていうか何しに来たのよー!!」


「…あ、元に戻った。」


シカマルが目を丸くして人差し指で私を指して言った。


「…は?」


私は怪訝な顔でシカマルを見た。



「…いや、いのがここ最近らしくねえっつーか、元気ない気がしてよ。んでちょっと気になって来てみた。」


「え…。」


どくん、と心臓が波打った。


「でもちったあ元気になったみてぇだな。具合が悪かったのか?」


「…違う。」


どうしよう、シカマルと話していてるだけなのに目が見れない。顔を上げられない。


どくんどくん


「違うならいいけど無理なダイエットばっかしてると逆にリバウンドするぜ。気をつけろよ。」


「だからそんなんじゃな…」


そのときシカマルの右手が私の頭にぽん、と触れた。


ドキドキが最高潮に達するのを感じた。


なんで、シカマルなんかに…。


「じゃあな、まあなんかあったら言えよ。」


パタンとドアが閉まる音と共に私の緊張感は一気に崩れ落ちた。


「…なんなのよ、コレは…。」


今度は別の意味でシカマルに頭を悩ます日々が始まりそうな予感を私は感じずにはいられなかった。


end
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