相思相愛には程遠く

□1.
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携帯電話をパチンと閉じて、荷物を持って玄関に向かう。

靴を履いている後ろで母の声が聞こえた。


母)『あっちでも元気でやんなさい』


『うん、ありがとうお母さん』



(これでしばらくはお母さんに会えないんだよな…)

なぜ今思ったのか、急に母から離れるのが寂しくなった。

ちょっと涙腺が熱くなったけどきゅっと我慢する。

我慢しているのがバレたのか、母に笑われながら優しく頭を撫でられた。


『じゃあ、行くね』


母)『行ってらっしゃい』



母が私に手を降るのを見ると、私はドアノブに手を掛けて押した…


と思った。




本来なら私が押したはずなのにいきなり外側から引かれて私は引っ張られる形になった。

(こっ転ぶ…っ!)

何が何だか分からない私は反射的に目を瞑った。

しかし、予想は外れてぽふんと音を立てる様に私は、柔らかい物に当たった。

(…あれ?)

ゆっくりと開いた目をぱちぱちさせる。

それが男の人の胸板と気づくのに少々時間が掛かった。


母)『あらっ!カズ君!』


……は?え?

カ、カズ君?


徳)『…いつまでそこにいるつもりだ』


いきなり上から降ってきた声は懐かしくて少しだけ呆れている様に聞こえた。

電話越しではない本当の"彼"の声にぴくりと体が反応する。

そろりそろりとその人の胸板に埋められた顔を上げると…


徳)『琴葉』



私は、目を開いたまま固まっていた。

そこには、ものすごくカッコよく成長したカズ君がいました。


徳)『なんだ、俺の顔に何かついてるのか?』


『え?あ!…えっとね』













お久しぶりです

(…あぁ)
(本当にカズ君?)
(何を今更)
(だって、前よりずっとカッコいいんだもん)
(!)

((あらあら))
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