第81話〜
□第81話
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さぁて、今日は美晴と何をしようかなぁ。
あ、居た!
「美晴!」
廊下を歩いている美晴に抱きついた。
「ごめんシャル。今忙しくて」
そう断った美晴は、いつものような柔らかい顔ではなく少し真剣な表情だった。
「あ、ごめん……。また今度にするよ」
嘘じゃなくて本当に忙しそうだから、ボクはちょっと寂しかったが美晴から離れた。
すると美晴はすぐにどこかへ行ってしまった。
最近何だか美晴が変なんだ。いつも忙しそうにしてるし、時々悩んで考え込んでいるし。
あのとき誰かと電話で話してから、そうなったんだよね――。
「ん? 電話だ。ごめんねシャル」
少し前のある日の昼休み、そう言って席を外した美晴は階段で電話をしていた。
あまり美晴に電話がかかってくることはない。用事は大体ここの中だけで済むからだ。
美晴のお友達と電話する時はいつも寮の部屋で話している。こんなお昼休みになんてしてたのをボクは見たことはない。
「整いましたか。ありがとうございます。助かります。では僕も動き出します」
電話を切った後、美晴は一つため息をついて、よし、と拳を握り戻ってきた。
「美晴。何話してたの?」
気になったので遠目から見ていたが、電話の内容は聞こえなかった。
「ん、シャルには関係ないよ」
そう言って席につき、何やら考え始めた。
美晴が、関係ない、なんて言うの初めてだ。ボクには何でも言ってくれてたのに。
例え他愛ない内容でも、こんなことだったんだ、なんて笑顔で話してくれてた。
そんな美晴が……。
それからは美晴はまるでボクのことを避けるように動いてた。
いつものように話しかけても、
「美晴! 遊ぼ?」
「ごめん。ちょっとやることあって」
そう言って部屋に閉じこもってたり、
「ねぇ美晴?」
「ん? ごめん。聞いてなかった。もう一度いいかな?」
上の空でボクの話を聞いてくれてなかったり。
久々に部屋に来てくれたと思ったら、
「ごめん。ラウラに用があるんだ。ラウラ、ちょっと来てくれる?」
「うむ。なんだ」
ラウラだけを呼び出して、部屋の外で何か話してる。
「美晴と何を話してたの?」
ってラウラに聞いても、
「他愛のないことだ。言うまでもない」
そう言って全く教えてくれない。
そして今度は、
「美晴!」
「簪さん! ちょっといいかな」
「………」
何かに夢中なのかこっちに気づいてすらくれない。
一体ボクの知らないところで、美晴は何をしようとしているの?
ボクだけ頼ってくれないなんて、美晴にとってボクはそんなに信用ならない存在なのかな……。
「……はぁ。最近なんだか美晴に避けられてるよ」