第121話〜
□第126話
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こんばんは、美晴です。
学園生活二度目の夏休みに突入。
今年は何をしようかなぁ。実はもう考えてありますけど。
「え? フランス?」
夜。部屋に来たシャルが僕の夏休みの計画を聞いて驚きの声をあげる。
「そう」
「どうしてフランスに……」
またデュノア社に乗り込むのかとシャルは不安そうだ。さすがにもうしないよ。
「実はシャルのお母さんに挨拶しておきたいと思ってね」
「それって、ボクの死んじゃったお母さん?」
シャルは自分のお母さんか、それともあの嫌な方のお母さんなのか、少し考えていた。
「そう。シャルをお嫁さんにするんだ。しっかりとお母さんには挨拶しないと」
もし生きてる方だったら挨拶の意味が変わっちゃうよ、多分ね。
大事にされてきた娘さんをお嫁さんにする以上、しっかりと親御さんには挨拶をするのが礼儀。たとえそれが故人であっても。
「でもずいぶん急に……」
「実はこれはかなり前から考えてたんだ。去年の夏ぐらいにはもうね」
結局去年はお母さんよりもミシェルさんの方に挨拶に行ってしまったけど。
「そうなんだ……。いつから行く気?」
こう尋ねるってことはシャルは着いてきてくれるってことだな。
お墓の場所はシャルがよく知ってるだろうし、思い出も色々聞きたかった。
もし嫌な思い出が先行して行きたくないとか言ったらまた今度って思ったけど。
「うん、みんなも一緒に行くって言うだろうから、みんなの予定が把握出来次第行こうと思う」
観光もする気だから、旅行としてみんなで行きたいというのもあるが、みんなが家族なんだ。行ける人みんなでお母さんに挨拶をしたい。
「じゃあ出発までにあまり時間はないんだね。何で?」
僕の言葉にシャルは少し訝しげな顔をする。
確かに夏休みはたっぷりある。もう少し余裕を持ってもいいのかもしれない。でもね……。
「うん。夏祭りまでには帰ってきたい。今年も一緒に花火を見ようって約束したからね」
去年した約束を僕は忘れてはいない。あれはとても大事な約束だ。
――ずっと一緒にいようね。一緒に同じ景色を見たいね――
そんな意味が込められたとても大切な約束。
「そう……だね。今年は去年みたいに三人じゃないけど、でもみんなで見ようね!」
シャルは柔らかい表情を見せる。
君にとっても大切な約束であってくれると嬉しいな。
「じゃあ早速予定を聞きにいこうよ!」
シャルに引っ張られながら、他の五人にも予定を聞いていった。
「じゃあみんな。いってきます」
「気をつけるのよ、美晴君」
「何かあったらすぐに学園に連絡を入れるんだぞ」
「わかってるよ」