第121話〜
□第128話
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「もしもし、織斑です」
三日目の朝、クラリッサさんからかかってきた電話。
僕はラウラではなくクラリッサさんであることに少し不思議に思いながらも、とにかく電話に出た。
『ク、クラリッサです。美晴殿、申し訳ありません……』
電話の向こうのクラリッサさんの声は、何だか涙声と言うか、憔悴しているような声だった。
「謝るなんて、何があったんです?」
この前接した限りでは、この人は常に冷静に仕事をする人なはず。こんな声を出す印象はなかった。
『私は隊長をお守りしきれませんでした……』
聞いた瞬間に一瞬にして体から血の気が引いた。
隊長。――つまりラウラだ。『お守りしきれませんでした』というその言葉が意味するのは、ラウラに何かが起きたということ。悪い方向のことが。
しかもこの声から察するに、かなり深刻な事態。
「何が! 何があったんです!」
朝だとか、二人がまだ寝てるとか、そんなこと思いやる余裕がないくらいに僕の精神は一瞬にして追い詰められた。
『申し訳ありません……』
「あんたの謝罪はどうでもいい! 何があったのか早く言え!」
ただ謝り続けるクラリッサさんを怒鳴りつけた。そんな謝罪よりもラウラの身に何が起きたのか、それを聞きたかった。
『――っ! 失礼しました。取り乱しました。とにかくお話しします』
「何かあったの? 美晴」
クラリッサさんが話し出そうとするとき、僕の声でシャルと簪さんが目を覚ました。
「ごめんシャル。ちょっと黙ってて」
僕は今まで一度も向けたことがないほどの目でシャルをにらみつけた。
「う、うん。わかった」
その目を見たシャルは少し怯えたような表情をしながら黙った。
「どうぞ」
僕は改めて説明を要求した。
『……はい。昨日隊長は我が隊の基地に到着され予定通り検査を受けていたのですが、隊長を拘束するよう上層部が命令を出したらしく、突然に多数の部隊に囲まれて、抵抗もむなしく隊長と私達は拘束されました』
「一体なんで! ラウラが何をしたと言うんです!」
僕は声を荒らげる。その中にあったラウラの名前を聞いたシャルと簪さんは、驚き顔を見合わせた。
『はっきりとはわかりませんが、ただ一部の人間がVTの件はこれでと言っていたのが聞こえました』
VTシステムの事か。
「あれが何で今さら! もう一年以上も前の話じゃないですか!」
『軍にとっては今の話題でもあるのです。最近終了したIS委員会の審議により、軍は責任者の処罰を命じられています』
「ならラウラは無関係だ! むしろ被害者じゃないですか!」