泣いた白鬼
□第一訓
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《ゴオォォォ…》
音を立てて頭上を行く舟を、俺は金槌片手に見上げた。
…全く、時代は変わるもんだ。
十数年前まで、人が空を飛ぶことなんざ夢のまた夢だった。それが天人に侵された今となっては、金持ちは宴会やるにもお空の上だ。
異国の舟や宙を浮く駕籠が飛び交う今の日本は、かつて空を夢見た先人たちの目に、どう映るのだろうか。
少なくとも俺は、あんな鉄の塊が浮くスモッグだらけの空より、…ガキの頃見上げた、どこまでも透き通るような青空が好きだった。
あの空の下、どこまでも続く桜の絨毯を走り抜け、雨粒を弾く紫陽花で雨宿りをするカタツムリを捕まえ、空の色が映った川で水遊びをし、舞い散る紅葉とどんぐりを飽きることなく集め、溶け始めた雪ではしゃいで遊んだあの日々を。
あの空は、俺たちを見守ってくれていた。
あの空を、俺たちは、愛してたんだ。
…そこまで考えて、感傷的になっていることに自嘲し、俺は首に掛けたタオルで頬に伝う汗を拭った。
違うよな。んなこと考えて物思いに耽るなんざ俺のキャラじゃねぇ。…俺も嫌な事を忘れてお空の宴会場でパァッといきてーよ、くらいのことを思っておくのがちょうどいい。
そんな事を思いながら小さく笑うと、屋根の向こう側に居た新八が、ひょっこり顔を覗かせた。
──第壱章──
□ 第一訓
【"自ら墓穴を掘る"って、現実に自分で穴掘ってる姿を思い浮かべるとやたらと怖い】
◆銀時視点