泣いた白鬼
□第三訓
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神楽たちに見送られた後。
女将に貰ったチケットを見せて舟に乗り込むと、スタッフが何か慌てだして、特別席だか何だか知らないが御丁寧に宴会場まで案内してくれた。
カウンターに座って、何気なく目の前の板前と話していると、その板前…もとい大将があの旅館の女将の夫らしく。
今日の屋根修理のことを言うと、オマケ多めにしますね、と優しく微笑んでくれた。
…と、それは良いんだが。
「ヘイ!旦那。焼鳥お待ち」
「おっ旨そ!…って大将。焼鳥はいいけどよ。此処、お酌のサービスひとつ無いの?
美女も居ねーし、お酌もねーし。どうなってんの、マジで」
焼鳥は旨いし、酒も普段手が出せない様な高価なものをタダで呑めて嬉しいのだが。
…女将が言ってた『洗練された美女』とやらは居ないし、お酌のひとつもしてくれないし。
仕方なく、お猪口に自分で酒を注いで煽っていると、高価な酒も味気無いものに感じられた。
すると、俺の抗議の声に、大将は手を拭きながら申し訳なさそうに苦笑いする。
「いやぁ、まさかそんな事は無いですよ。旦那は特別待遇のお客様ですぜ?勿論、この宴会船で一番の花魁を用意してますよ。
…ただ、今は馴染みの客が来ていて、手が離せないらしいのです。もうすぐ来ると思いますが…」
ふーん、と言う俺に、大将は『お詫びです』と一皿の刺身の盛り合わせを差し出してきた。
俺がそれを受け取ると、従業員に花魁を呼びに行かせるように言うとか言って、大将はカウンターから出ていった。
□ 第三訓
【変装するなら心まで飾れ】
◆銀時視点