泣いた白鬼

□第五訓
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大きめの氷が入ったグラスに、とくとくと琥珀色が注がれていく。

逸る気持ちを抑えながら、土方くんと沖田くんのグラスにも注がれるのを見届け。
俺達はグラスを差し出し合い…、一言。




「「「…乾杯っ」」」



ゴクリと喉を鳴らして飲み干した。

酌してくれたおいらんは、俺達を見てふわりと微笑む。



「…どうでありんすか」






「うっまぁぁ!!何コレ!!殺される!!!」

「…このバランスっつーの?喉の奥から芋の甘い薫りが漂うどっしりとした重みのある味わい…たまんねー」

「コレがあの幻と謳われる森イ蔵…。癖が強すぎなくて呑みやすいんですねィ。…最高ですぜ」



それぞれに感嘆していると、おいらんは嬉しそうだった。



「ふふっ…それはようござんした。
皆さんに喜んでもらえて、あちきも嬉しゅうござんすよ」



そう言ったおいらんの顔は、森イ蔵にはしゃぐ俺達を見て笑った、あの朗らかで幼げな笑みと違い。
"太夫"らしい妖艶な…だが作り物のような笑みだった。


俺は、おいらんが土方くんと沖田くんのグラスにお代わりの酒を注いでいるのを、斜め後ろから眺めていた。








…ふと、俺の視線に気が付いたのか、おいらんが振り向いた。

小首を傾げるその仕草さえ…、男を誘う色香が漂っている。








「…銀時様?」

「…なぁ、おいらんも呑もうぜ?
せっかく、おいらんのとっておきの森イ蔵様が解禁されたんだからよ」



そう言って一升瓶を傾けると、沖田くんがおいらんにグラスを渡した。

一瞬迷った素振りを見せたが、おいらんは一言俺に詫び、俺の酌を受けた。




おいらんのグラスに酒が満たされると、今度はおいらんが、俺のグラスに注いでくれる。

そして、静かに二人で乾杯した。






「…美味しい」

「あぁ、旨ぇ。おいらんのお陰だ」



そう言うと、おいらんは本当に嬉しそうに…頬を染めゆっくりと目を細めた。






そんなおいらんを見て、俺は何故か、…凄く嬉しくなって、
…おいらんを、無性に抱きしめたくなっていた。









□ 第五訓

【目は口ほどに物を言う】

◆銀時視点

 
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