泣いた白鬼
□第六訓
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目の前に広がるのは、
赤、紅、朱、緋、アカ、あか…
その中心に、私が居る。
「へへへへ…
天下の"夜叉太夫"様も、所詮人間か…」
男の下卑た嘲笑が聞こえた。
くそ…
ムカつくけど…笑える程身体が動かない。
あぁ…本当に。
天下の"夜叉"が、…天人にあれだけ恐れられていた"紅蓮"が、お笑いものだわ…
……あぁ、目の前が霞む。
「…いやあぁぁぁ!鷹尾太夫様ァ!!」
叫び声のした方を見ると、いつも私の世話をしてくれている禿(かむろ)が、紅い私を見て涙を流している。
…アレ…鷹尾って…誰……?
…あぁ、私のことだわ…
…頭が混乱してるのだろうか。
思考が上手く働いてくれない。
私は誰で……何故此処に居るのだろう…?
何故、私は"紅蓮"になった…?
何故、私は"夜叉"になった…?
…アレ?思い出せない……
…まぁ、いい。
ゆっくり順を追って、自分の人生を思い出してみよう。
私は、己の身体が倒れゆく感覚に身を委ねながら、ゆっくりと目を閉じた。
□ 第六訓
【熱き血潮の冷えぬ間に】
◆"蓮"視点