泣いた白鬼
□第九訓
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「ぎ…銀時様…どうして此処が…?」
座ったままの私が見上げると、銀時様は何処からか出したタオルを私の頭に被せた。
「…こんな所で濡れたままで居たら、風邪引くだろ?」
…ふわりと笑いながらそう言って私を立たせると、銀時様はこの桜並木沿いにある、ビニールシートの掛けられた出店に私を連れ込んだ。
青いビニールシートをくぐって入ってみれば、外の雨の所為でジメジメしているが、雨を凌ぐには充分で。
ソース焼きそば、と少し特徴的な字で書かれたビニールの屋根に、雨がぴちゃっと跳ねる音を聞いていると、何処か心が落ち着いてきた。
吊された電灯を点けると、出店の中がオレンジ色の光でぼんやりと照らされる。
「これ、俺の知り合いの出店だからさ。気にせず座って」
銀時様はそう言いながら、私に椅子を差し出してくれて、自分は足元のストーブに電源を入れようとしているのか、しゃがみ込んで手を動かしている。
自分だけと申し訳ない気持ちになりながら、私は頭を一度下げてその低めの木の椅子に腰掛け、銀時様の背中を見た。