舞姫
□乱舞…弍
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「待てよ姉さん、俺も行く」
屋敷を出たところで突然後ろから肩を叩かれ、シェナは目を丸くし眉間にシワを寄せた。
「貴方は父さんを……―――」
言いかけて、肩をすくめたディーゴに遮られる。
「その父さんからの命令だよ。それに、人手は多い方が良いんだろう?」
尋ねるようにそう言った弟に呆気に取られながらシェナは瞬きを返した。
父さんがディーゴに命令?
いったい何の風の吹き回しか。
けれど好都合に変わりはないわけで、やや考えたのちシェナは頷いた。
「……そうね。お願いするわ」
「というわけでお姉さん方、俺にも他のやつらの特徴を教えてくれよ」
ナミとロビンに向き直り、ぶっきらぼうに尋ねたディーゴに彼女たちは顔を見合せ、残りの仲間たちの特徴を伝えた。
「うちのコックを勤めている金髪の男でサンジくんって言うんだけど、その彼と、緑色の頭をした剣士のゾロって言うのを探して欲しいの。あとは……」
「ブルックも居ないゾ!」
「ああ、そうそう、ブルックだわ。アイツはその、なんて言ったら良いのかしら『わぁー!!ガイコツが歩いてるぞーっ!!』………居たわ」
どこからか聞こえた声に額を抑え、ナミが呟いた。
「ガイコツ……」
島民たちの騒ぐ声に反応したシェナが、声のする方に振り返ると何かがこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
「なんだ、こんなところに居たのかぁ!」
とルフィが楽しげに笑っているのを見て、アレが彼らの仲間の一人なのだと勘づく。
金髪でも緑色の頭でもない。
ピンク色の頭が見えて、瞬間、シェナとディーゴは絶句する。
ふわふわの綿あめのような髪をしたガイコツが、ゆっくりとこちらに歩いて来ているのだ。
明らかに普通の人間ではない。
ソレはこちらに気付くとパッと表情を明るくさせ(といっても表情筋はなさそうだが)、大きく手を振ってきた。
「みなさ〜ぁん!!探しましたよぉ〜っ。もう、目を皿にして探しちゃいましたよ。って私、目なんて無いんですけど…。ヨホホッ」
すらりとした骨をさらけ出し、ブルックがヨホホッと笑った。
ついでシェナの姿を見つけるなり、その高身を低くしシェナの目の前で膝を着き、いきなりこちらの手を取った。
「お嬢さん、とても素敵な髪の色ですね…。よろしければ……パンツ、見せて貰ってもよろしいですか…?」
「やめんかっ!!」
バコン!
ナミが瞬発的にブルックを殴った。
衝撃で放された手を素早く引っ込め、シェナはものすごい速さで瞬きを繰り返し、ディーゴがシェナの前に立ちはだかりブルックから姉を遠ざけようとする。
側でルフィがケラケラ笑っていて、チョッパーはおろおろしていた。
シェナは口をあんぐりと開け、ディーゴの背中からブルックを凝視するばかり。
残念そうに肩をすくめるブルックに、ふいにルフィが声をあげた。
「そうだ。なあブルック、サンジとゾロを知らないか?」
少し辺りをキョロキョロと見回しながらそう尋ねれば、ブルックは「ああ」と頷いていましがた来た道を指さした。
「ゾロさんとサンジさんでしたら、繁華街の方へ向かっているのを見かけましたよ」
ブルックが登ってきた坂の向こうに、街と繁華街がある。
ブルックの証言をたよりに、シェナ一行は繁華街を目指すことになった。
そして、小さな島とも言えど広い繁華街で迷子にならないよう道を知っているディーゴとシェナで二手に別れることにして、他の一族の者にも手分けするよう指示をだした。
ブルックは屋敷で待機することにして、早速捜索を開始する。
「じゃ、なるべく早く戻って来るから、大人しくシェナん家で待ってるのよ」
「はい、わかりました〜。ナミさんたちもお気をつけて!」
ナミとブルックの会話を尻目に、ロビンは楽しそうにシェナとディーゴを見た。
同じような顔で、シェナとディーゴがひたすらブルックを見つめ、口を揃えて小さく叫ぶ。
「「ガイコツが動いてる……!!」」
何とも反応の遅い二人に、またもチョッパーたちが突っ込んだ。
「「「や、だから、それ今かよ!!」」」
「ヨホホッ」
鈍々姉弟にナミが苦笑しながら、繁華街へ向けて、舞技一族を交え捜索が始まった。
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