白銀の魂

□美人なのにもったいない人間て居るじゃない?アレってどうよ 第三話
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考えても考えても、銀時は当人ではないためわからない。


濃過ぎた1日を振り返っている内に微睡みに捕まり、銀時は考えるのも億劫になりそのまま目蓋を閉じた。


明日また女に聞けば良い。


とにかく、もう面倒事は御免だとばかりに、銀時は一度大きな欠伸をして、深い眠りに着いた。




―*―*―




明け方近く。


コチコチと鳴る古い掛け時計の音で目が覚めた。


また、知らない場所に居る。


見覚えのない天井が視界いっぱいに広がり、身体が動かないことで、自分に麻酔が射たれていることを知る。


じんわりと響く痛みが目眩を起こす。


動かないながらも視線を巡らせて、隣に銀色を見付けヒュッと息を呑む。


無防備に寝ている男の姿。


昨日逃げ出して来た、あの暖かい家に居た男の姿が自分のすぐ隣にある……。


わけもわからず胸が痛んだ。


鼻を突く薬剤の臭いから、自分が治療を受けていることを知り、言い様のない乱れた感情が込み上がる。


また、助けられた……―――?


見ず知らずの自分を、コイツはまた助けたのか?


何故?


どうして?


いったい何のために……―――


お前も私を利用するのか?


あいつらと同じように、要らなくなったら殺すの?


視界ギリギリに映る銀色に、怒りなのか悲しみなのかわからない感情が胸を突く。


「……っ……―――」


消えていた筈の人間らしい感情が、十数年ぶりにこの身体を揺さぶった。


もう、苦しいのは嫌だ……。


捨てられるのも、要らないと言われるのも、傷付けられるのも、殺すことしか出来ない自分も。


もう、嫌だ。




腕に繋がった点滴が、ポタリと滴を落とす。


麻酔が含まれているのか、また目蓋が重くなっていく。


傷が鈍く痛むからか、女は知らず知らず目尻に点滴のように滴を溢れさせていた。


完全に目蓋が閉じて、女が寝息を溢したその時。


溜まっていた滴はポタリと枕に痕を残した。


「……どうすっかね……―――」


女の起きた気配で目を覚ましていた銀時もまた、枕に残った痕を見遣り吐息を溢した。


マーダー。


それはmother(マザー=母)なんかじゃなく、つまりはmurder(マーダー=殺人者)だ。


そんな物騒な名で呼ばれる女が泣いたりするのかね。


ポリポリと頭を掻きやり、銀時はひとまず二度寝するに撤した。





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