magic of destiny
□第一章 全てを知る者
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全く見覚えのない少女に少し困惑してしまったのか、ダンブルドアは「ふむ…」と言ったきり沈黙を落とした。
同じように沈黙を守るリディシアのすぐそばでは、マクゴナガルが二人の姿をチラチラと心配そうに見ていた。
リディシアは一度瞬きをして、この沈黙を何とかしようと考えゆっくりと言葉を吐き出した。
「私は貴方にも、マクゴナガルさんにもお会いしたことはありません。だけど、どうしてか、私は二人の事を知って居ます」
妙に大人びた口調と仕草でそう告げるリディシアに、二人は揃って目を丸くした。
そしてリディシアが後から付け足すように呟いた言葉に、更に困惑してしまう。
「ただ、私は私が何者なのかはわからないのですが…」
自嘲気味にそう言ったリディシアに、校長と教師は目を見合わせた。
ようやく今ある問題の深さに気が付いた。
ダンブルドアは重い沈黙を破り、自分の事を知らないというリディシアに一つ問い掛けた。
「自分の事がわからないとは、一体どういうことかな? せめて名前くらいは覚えておらんかのぅ」
飄々として見えて、実は少し彼の眉が上がったのに気付いたリディシアは、羊皮紙に教えて貰った自分のものだという名をポツリと告げた。
「リディシア・マクレガンです」
名前だけは、ここに来る前に羊皮紙に教えて貰ったのだとリディシアは小さく付け足した。
その瞬間。
リディシアの名前を聞いたダンブルドアとマクゴナガルは驚愕のあまりに言葉を失った。
リディシア・マクレガン。
彼女は今、マクレガンと名乗ったのか…――?
ダンブルドアとマクゴナガルは、羊皮紙に教えて貰ったというリディシアの言葉よりも、彼女がマクレガンと名乗った事に困惑していた。
再び顔を見合わせたダンブルドアとマクゴナガルは、互いの驚愕しきった表情を見て、どうやら聞き間違いではないということを知る。
リディシアはそんな二人の様子に、慌てて口を開いた。
「あ、あの。羊皮紙にダンブルドアを訪ねるよう言われました。私はしばらく眠って居たようで、これからどうすれば良いのかを、貴方に聞くようにと教えられてここまで来ました」
はっきりとそう告げるリディシアに、ダンブルドアもマクゴナガルも今ある状況に益々混乱した。
「う〜む………」
今ある情報だけで、ありとあらゆる推測や憶測をたて、彼女が嘘を付いていないことも含め、事は大問題である。
そしてどうやら、彼女は自分の置かれている状況を理解していないらしい。
記憶喪失であることからして、それも仕方のない事なのかも知れないが…。
ダンブルドアは小さく息を吐き出し、チラリとマクゴナガルを見た。
マクゴナガルはそれに応え、静かに頷き一歩後に下がり、ダンブルドアの周りに小さな空間を作る。
そこへダンブルドアが足を踏み出し、懐からゆっくりとした動作で杖を取り出した。