magic of destiny
□第一章 全てを知る者
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「リディシア・マクレガンと言ったかな?」
そう尋ねて、リディシアが小さく頷いたのを見ると、ダンブルドアは真っ白な髭をふわりと撫でた。
「ふむ……。ではまず、血筋から話さねばならんのぅ」
そう言って杖を持ち上げ、ダンブルドアは空中にその先端を向けると、静かに文字を描いた。
ダンブルドアの手の動きに連動し、金色の文字が次々と現れていく。
「まず、古くから純血を守ってきた一族の話からじゃ」
ダンブルドアが簡単に話していく中、リディシアは眉をしかめさせていた。
血筋とやらが、自分とどう関係があるのだろうか……。
「マルフォイ一族に、ブラック家、それからゴーント家、プルフェット、マクラミラン、プリンス………それから、マクレガン」
幾つかの名前が上がり、最後にマクレガンと言ったダンブルドアの表情は、リディシアと同じくらい酷く困惑している様子だった。
純血一族の中に、自分の名前があるということに違和感を覚えるリディシアをよそに、マクレガンと表した文字は消えずそこにある。
なぜこうも違和感を感じるのか。
その理由は明快で、ダンブルドアが上げたどの名前もリディシアの記憶にあるというのに、マクレガンという名前だけが綺麗さっぱり抜け落ちていたからだった。
どうして……?
自分のことはわからないのに、それ以外のことなら恐ろしいくらい知っている。
それに、ダンブルドアのマクレガンと言った時の表情も気になった。
リディシアが答えが見つからずダンブルドアを見つめていると、彼もまた、訳がわからないというように首を振って見せた。
「リディシアよ、どうか落ち着いて聞いて欲しいのじゃが…」
そう言って次に発せられた言葉は、リディシアを混乱に落とすのに十分な力を持っていた。
「マクレガン一族は、当の昔に滅びた一族なのじゃよ。今から100年は昔に、じゃ…」
リディシアの存在はあり得ないのだと静かに告げたダンブルドアに、リディシアは自分の身体から血の気が引くのがわかった。
それじゃあ、私は誰なの?
あの羊皮紙の言うことが嘘ならば、私はもう誰でもなくなってしまう。
存在しない者になってしまう……!!
突然に押し寄せた深い不安に、悲痛に顔を歪め、リディシアはその場に崩れ落ちた。
「リディシア!!」
慌ててマクゴナガルがリディシアを支えにやってきたが、彼女にはその手を取る力はもうなかった。
もはやリディシアは目の前のダンブルドアにすがるほか、生きていけはしないということにも気付いてしまった。
彼に拒まれれば、リディシアにはもう行く場所もない。
何せ、マクレガン一族は当の昔に滅びたというのだから。
絶望に地を見つめ、リディシアは弱々しく囁いた。
「私はこれからどうすれば…?」
答えなど見つからず、泣き出しそうになる。
ひとりぼっちでいた、あの少年の姿が脳裏に浮かんだ。
彼は今頃、どうなっているのだろうか。