magic of destiny

□第七章 飛行訓練
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「やめてよ、マルフォイ」


リディシアが何か言う前に、パーバティ・パチルがマルフォイをとがめた。


「へー、ロングボトムの肩を持つのか?」


嘲笑うマルフォイ、その横で気の強そうなスリザリンの女子がパーバティを冷やかした。


確か、パンジィ・パーキンソンとかいう名前だったはずだ……。


「パーバティったら、まさかあなたがチビデブの泣き虫小僧に気があるなんて、知らなかったわ」


クスクスと人を小バカにするような笑みを浮かべ、リディシアの頭はプッツンと音を立てた。


嫌味な子……。


スッと息を飲み、再び何か言おうと口を開いたリディシア。


が、またそれを遮られる。


「見ろよ!」


マルフォイが声をあげ、言われた通り見ればその手には『思い出し玉』が握られていた。


「ロングボトムのばあさんが送ってきたバカ玉だ」


ケラケラと笑い、リディシアはますます持ってプッツンと何かを切らした。


「マルフォイ、こっちへ渡してもらおう」


ハリーが静かにそう言って、その場にいた全員がおしゃべりを止めた。


ハリーが怒っているのに気付いたリディシアは、ハリーを立たせようと口をつぐむ。


それにニヤリと笑ったマルフォイ。


「それじゃ、ロングボトムが後で取りにこられる所に置いておくよ、そうだな……木の上なんてどうだい?」


「こっちに渡っ…―」


「ドラコ・マルフォイ」


ハリーが叫ぶのを遮り、リディシアは低くく名を呼んだ。


ビクリ。


と、マルフォイの身体が小さく揺れる。


この上ないほどの笑顔を振り撒き、リディシアは一歩マルフォイに近付いた。


何が言いたいか、わかるわよね……?


と、リディシアは一層微笑む。


「何よアンタ……っ」


パンジィ・パーキンソンがマルフォイを庇うように立ち、リディシアは彼女にも笑ってみせる。


「別に、その玉をネビルの代わりに返して貰おうと思っただけだわ。それとも……貴女が返してくれるの?」


スッと細められたリディシアの漆黒の目。


底冷えをするような眼光に射抜かれ、パンジィ・パーキンソンはビクッと震えた。


私の顔ってそんなに怖いのかな……。


なんてよそで思いながらも、リディシアはまた一歩マルフォイに近付いていく。


すると、マルフォイは畏怖の表情を浮かべながらバッと箒に跨がった。


「マルフォイ!?」


驚くリディシアを無視し、マルフォイは一気に上昇し頭上を旋回してみせる。


「ここまで取りに来れば返す!!」


どうせ飛べないだろうとばかりの表情を浮かべて、マルフォイがリディシアとハリーを見下ろした。


バッと箒を掴んだハリー。


ハーマイオニーがハッとして叫んだ。


ダメ!フーチ先生がおっしゃったでしょう、動いちゃいけないって。私たちみんなが迷惑するのよ!」


本当に迷惑そうに顔をしかめながら言ったハーマイオニーに、リディシアは同じように顔をしかめた。


「迷惑だと思っているのは、案外貴女だけかも知れないわよ」


囁くように呟いて、リディシアはハリーを見た。


゙ハリー、行っで


頷いたハリーは箒に跨がり、瞬間、強く地面を蹴った。


一気に急上昇し、風にハリーの髪やマントがはためいた。


水を得た魚のように生き生きと飛び上がり、ハリーはさらに上昇しマルフォイと向き合った。


下からでも、マルフォイがハリーの箒の扱いに呆然としているのがわかる。


「知らないわよ、こんなこと、先生にバレたりしたら……」


「バラさなければいいのよ。友達の大切なものをみすみす奪われる方が不名誉だわ」


青ざめるハーマイオニーにリディシアが微笑み、ハーマイオニーは面食らったように「でも、だけど」とか呟いていた。


と、その時。


生徒たちのざわめき声にハッとして、リディシアはハリーたちを仰ぎ見た。


ハリーがマルフォイに飛びかかっていき、それをマルフォイが危機一髪とばかりにかわしている。


いくつかの拍手が巻き起こり、リディシアは次の瞬間、箒を掴んでいた。


なんて、愚かな!!


「リディシア!?貴女まで何を………!!」


叫ぶハーマイオニーの声を無視し、リディシアは素早く地を蹴り低空を一気に駆け抜けた。


マルフォイが、ネビルの思い出し玉を高く放り投げたのだ。


ハリーが後を追い、リディシアはそれを補佐するように下から追飛した。


背後で聞こえる悲鳴。


玉を追い、地面に向かって一気に降下するハリー。





 
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