magic of destiny
□第七章 飛行訓練
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ハリーが玉を掴んだその瞬間、リディシアは少し上昇しハリーの上に並び手を伸ばした。
「ハリー、手を伸ばして!!」
リディシアの声と共にハリーが玉を掴んだまま手を伸ばし、リディシアがその手を取るとぐいっと空に向かって上昇した。
ネビルのようにケガをされては堪らない。
バラすバラさないの前に、ケガをした時点でバレるのだから。
それに、友達がケガをするだなんて、ネビルの時でもう懲りた。
ぐっと浮かび上がったハリーとリディシア。
ゆっくりと速度を減速させて、ハーマイオニーたちの元へ戻るとそっと着陸した。
よし、事件は防げた!!
そう内心で喜び、小さくガッツポーズを取ったリディシアと、箒の素晴らしさに高揚していたハリー。
が、次の瞬間には罰が悪そうにこめかみを押さえた。
「ハリー・ポッター、リディシア・マクレガン!!」
終わった……―――
ミネルバが城の方から目を大きくしながら走ってきて、二人を捕まえた。
「まさか、こんなことはホグワーツで一度も……」
そう言いながらハリーを見遣り、ついで「どうして貴女まで」という目を向けられた。
ゔ……と口ごもるリディシアに、ミネルバは深いため息を吐き頭を振ってみせる。
「よくもまあ……そんな大それたことを……。首の骨を折ったかもしれないのに」
というミネルバの言葉を聞いた瞬間、リディシアは彼女に一部始終を見られていたのだと悟った。
ああ、後でお叱りを受けることになる……―――
項垂れるリディシアに、パーバティが恐る恐ると進言する。
「あの、二人が悪いんじゃないんです……」
庇おうとしたパーバティ。
ミネルバは静かに彼女に向き直ると、きっぱりと言葉を切った。
「おだまりなさい、ミス・パチル……」
「でも、マルフォイが」
「くどいですよ、ミスター・ウィーズリー。ポッター、さあ一緒にいらっしゃい……貴女もですよミス・マクレガン」
やっぱり?
ロンがハリーを庇いリディシアの名前は出さなかったから、もしかしたらハリーだけに視点がいかないかと考えたが、そんなことはなかった。
ハリーと目を合わせ、苦笑を溢すと仕方なくミネルバのあとに続いて城へと向かう。
目の視界にマルフォイたちがほくそ笑んだのが見えて、苦々しい気持ちになった。
ミネルバは怒ると実は怖い。
それは、リディシアがホグワーツの生徒になり、授業を受けているうちにわかったことだが、まさか自分に矛先が向かうとは露ほどにも思わなかった。
ハリーがまるで絶望しているかのように表情を沈め、それが伝染し、リディシアまで青ざめる。
正面階段を上がり大理石の階段を上がり、一言も口を聞かずまっすぐ前だけを向いて歩くミネルバの表情は伺いしれない。
途中にある扉の前に案内され、無言のままドアノブをひねり、その先に広がった廊下をさらに突き進む。
たどり着いた先は、校長室でもミネルバの準備室でもなく、今まさに授業が行われているひとつの教室だった。
あれ、この教室って……―――
息を飲むリディシアの耳に、ミネルバの声が飛び込んできた。
「フリットウィック先生、申し訳ありませんが、ちょっとウッドをお借り出来ませんか」
やっぱりだ。
フリットウィック先生のクラスだ。
でも、なんで?
それに、ウッドって……―――?
疑問ばかりが浮かぶリディシアの前に、ふいに男子生徒が現れた。
彼は五年生だ。
一年生の私たちに一体なんの繋がりが?
顔をしかめるリディシアとハリーに、「ついていらっしゃい」と言い、ウッドという生徒も引き連れ再びミネルバは歩きだした。
人気のない教室を見付けるなりミネルバは立ち止まり、「お入りなさい」と三人を教室の中へ押し込んだ。
何事かと思いながら中へ入った三人を確認し、自身も中に入りドアをピシャリと閉めたミネルバ。
ああ、ここで叱られるのか……と項垂れたリディシア。
ハリーの顔にはもはや生気すら感じられない。
五年生は訳がわからないといった顔を浮かべており、そんな中、ミネルバがフワと表情を緩めた。
「こちらはオリバー・ウッドです。ウッド、シーカーを見付けましたよ」
なんて言ったミネルバに、ウッドが狐につままれたような顔を一気にほころばせた。
「本当ですかっ?」
「間違いありません」
戸惑うリディシアとハリーをよそに、ミネルバはさらに言葉を続ける。
「この子は生まれつきそうなんです。あんなものを私は初めて見ました。ポッター、初めてなんでしょう?箒に乗ったのは」