ゲットバッカーズ〜dream the world〜

□記憶の破片を取り戻せD
3ページ/5ページ



「おん…な……―――!?」


「ナイン、下がれ!!」


蛇眼を使われたら終わりだ。


あの蛮という男だけは読めない。


銀次や卑弥呼と違い本気で殺しに掛かってくるかも知れない。


叫ぶシックスに、ナインはふわりと後方に飛ぶと切り刻まれたフードをバサリと脱ぎ捨てた。


露になったナインの肢体。


スラリと細くしなやかな体躯に、漆黒の深い瞳と腰まで伸びた綺麗な長い髪。


どこからどう見ても、ナインは女だった。


「マジかよ……」


あの動きも、肩を貫いたあの力も、全部女の身でしたこと……。


「ナイン、ヤツの目は見るな!!」


「………」


「ちっ」


シックスの声で、ナインの視線が完全に蛮から逸れた。


普通の人間なら知らず知らず目を見てしまうものを、ナインは命令されればなにがなんでもそれを守りとおす。


もう二度と目が合う機会はないかもしれない。


痛みで動きが鈍くなっている今、完全にこちらの不利だ。


「蛮ちゃん、俺も戦う……」


「銀次!!」


「私も行くわ、なんかコイツ、ヤバそうだもの」


三人で一斉に行けば、あるいは……―――


そう考えた卑弥呼に、蛮も銀次も頷く。


卑怯だとかそんなことを考えている余裕はもうないのだ。


とにかくねじ伏せる。


ねじ伏せることが出来れば、卑弥呼の傀儡香なり催眠香なりで動きを止めることも出来る。


幸い、林川の言いつけを守っているシックスは闘いに加担する様子もなく、唇を噛みしめ立ち尽くしている。


「卑弥呼、加速香でスピード上げとけっ」


「言われなくても!!」


「二人とも気を付けて!!ちょっとビリビリするよっ」


手のひらに電流を溜め、銀次が雷の出力を最大限に上げた。


加速香を一気にあおりスピードを上げた卑弥呼と、ナインに向けて高圧な雷を放出する銀次。


シャツを脱いで無理やり止血し、蛮も再び戦闘体勢に入る。


もうデータもくそも知らねぇ。


とにかく、この女の動きを止める……。


目を閉じて、こちらを向いたまま何かに集中しているナインに蛮はそう考えた。


銀次の雷撃がナインに真っ直ぐ伸び、加速香でナインの背後に回った卑弥呼が腕を振り上げる。


微動だにしなかったナインは、ようやく動きを再開させた。


「………殲滅」


小さくこぼして、フッと卑弥呼の前から消えたナイン。





 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ