白銀の魂
□その人の言う普通ってのは、周りから見ると存外普通じゃなかったりするもんだ。 第五話
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「この場合、私はコイツらを起こした方が良いのか?だが、どう起こしたら良いんだ」
首を傾げた沙耶に新八は眉をひそめ、これから彼女にいろんなことを教えて行かなければならないのだと考えた。
「普通に起こしてやれば良いんですが、この人たちに常識は当てはまりませんからね。とりあえず、僕が起こして来ますからそこで見ていてください沙耶さん」
「……わかった」
新八はズカズカと銀時の眠る部屋まで行き、とたんに声を張り上げた。
「銀さん!!おはようございます!!というかもうお昼ですよ、起きてくださいっ」
ドゲシッ!!
「ぐはぁっ!!」
「………!?」
新八の飛びげりで転がっていった銀時。
沙耶は突然のことに瞳を見開き、その壮絶な光景を唖然と見つめた。
これやって起こすものなのか……?
転がった先で壁にぶち当たり、カエルが潰れたような声を上げた銀時を見詰め、今しがた壮絶な目覚ましを喰らわせた新八を見詰め、沙耶は言葉を失っていた。
「て……てめぇ新八ィイ!!朝からなんつーことぶちかましてくれてんだよチクショーっ!!」
「もう朝じゃないですよ。昼です!銀さんがいつまでもぐーすか寝てるから、沙耶さんひとりで待ってたんですよ!?怪我人放置しないで下さいよ!」
「はぁ?沙耶って誰だよオイ。お前の新しい妄想彼女かぱっつぁん」
汚い物を見るかのように眉間にシワを寄せた銀時。
新八はクワッと瞳を見開き、信じられないという顔をした。
「違いますよ!?まさか昨日の今日で沙耶さんを忘れたんですかあなた!?」
そんな新八に、銀時は寝ぼけた様子で頭を掻きながら思考を巡らす。
「沙耶っつったら、昔飼ってた猫しか知らないんだけど……え、なんでお前がそれ知ってんの」
パチクリと瞬きし、ぼうっと新八を見上げ首を傾げる。
新八はとたんに蔑んだ眼差しを浮かべ、曲がりなりにも自分の上司を冷めた目で見下ろした。
「もしかして寝ぼけてます?ていうか、記憶失ってます?だから昨日あんまり飲みすぎるなって言ったじゃないですかバカですか!?」
閨(ネヤ)から居間まで聞こえる怒声や罵声。
銀時は頭を両手で抱え、迷惑そうな顔をして唸りをあげた。