白銀の魂

□ついつい眠くなるのは気を抜くことが出来てる証。第七話
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新八を人差し指でそっと指差し、沙耶は確かめるように名前を呼んだ。


「あなたが、新八」


呼べば、新八は嬉しそうにまた大きく頷く。


その様子に少しホッとして、沙耶もまた小さく口元を綻ばせた。


次に神楽に向かい、またまた名前を呼び確かめる。


「貴女が、神楽」


「そうヨ!万事屋の紅一点、麗しきヒロイン神楽ネ」


えっへんとドヤ顔を浮かべ、そしてやっぱり嬉しそうに神楽も笑った。


「今はもうちげーけどな。はい、じゃあ俺は?」


神楽のバカに突っ込み、銀時が最後だとばかりに沙耶に笑みを作る。


沙耶は真っ直ぐ銀時を見遣り、じっと見据えると頷いた。


「銀」


短く、簡単に。


呼ばれた銀時は「へっ?」と間抜けな顔をした。


神楽や新八も瞬きを繰り返し、「え」という顔をする。


「間違った……?銀じゃない……?」


三人の表情に戸惑い、沙耶はまた困ったように眉を下げた。


それを見た銀時は慌てて首を振りやり、ひきつった笑顔で尋ねる。


「あ、いや間違っちゃいねーが……何で俺だけ省略されてんの?」


「??? 二人が貴方を銀と呼ぶから……」


銀さんや、銀ちゃん、と。


そう言った沙耶に、ここでようやく銀時は気付いてしまった。


やべ、そういや沙耶に自己紹介とかしてねぇ……。


若干の冷や汗を浮かべ、銀時は苦笑した。


「あー……なるほどな。そっかそっか。んじゃあ、銀で良いよ」


まさか自分の失態からだとは言えない。


コイツらバカとアホの前で、自己紹介してないからだとは口が裂けても言いたくない。


特に神楽は絶対ウザイだろうから……。


半ば投げやりに、銀時は笑った。


それに安心したのか、今度ははっきりと口元に笑みを作った沙耶。


それを見ると全部どうでも良く思えて、銀時は軽く息を吐いて沙耶の頭を撫でた。


「ま、これから先長い付き合いになるんだ。おいおい解っていけば良い」


くすぐったそうに首をすくめて、撫でてくる銀時を沙耶は静かに見上げる。


その表情には柔らかいものが混じっていて、新八も神楽も、もう沙耶をさほど怖いとは思わなくなっていた。





 
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