カラフルデイズ
□ACT.00 グレイメモリー
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賑やかな屋内。
いつも誰かしらが笑いを持ってきて、楽しげな声で溢れるこの家は、今となっては私のかけがえのない居場所となっている。
暖かな空間。
大好きなみんなの側。
大切な世界。
メカクシ団のアジトと呼ばれるこの家に、また新しい素敵な仲間が増えた頃。
ふと、昔のことを思い出していた。
それは、モモちゃんの純粋な疑問から。
いつものように夕食を作りながら、仕事に出掛けているキドやセトくんの帰りを待っていた。
リビングに居るのはシンタローくんとモモちゃん、マリーちゃんにカノくんで、和気藹々と談笑をしている。
そこで聞こえてきたのが、モモちゃんとカノくんの会話だった。
「サヤさんはカノさんみたいに嘘付かないですもん!」
「えー?心外だなぁー。僕よりもサヤさんの方が嘘つきだよ?」
「それがもう嘘ですよ!サヤさんは私の中では、それはもう聖女のように出来上がってますから!」
「騙されてるってー!サヤさんて本当酷かったんだから」
「信じません!!」
「なんならサヤさんがどうしてこの家に住むようになったのか、話してあげようか?」
「え?」
「いいよね、サヤさん?」
グルリと、カノくんがソファー越しにこちらに顔を向けてニッコリと笑う。
その表情は欺いているわけでもなく純粋なもので、けれどもイタズラっ子のような光を灯す榛色の目に苦笑を返してしまう。
「別に隠すつもりないからいいけど、変な教え方はやめてね」
「だいじょーぶ。ちょっとそこの幻想抱いてるキサラギちゃんの目を覚まさせるだけだからさ」
「それ、大丈夫っていうのかな」
苦笑しながら、私は今夜のオカズの仕上げに取り掛かる。
カノくんはすでにモモちゃんの方へと視線を戻していて、モモちゃんは私とカノくんとを交互に見ながらあたふたしていた。
ありのままの私を知りたいというなら、教えてあげてもいい。
マリーちゃんが昔を思い出したのか、ほんの少し頬を膨らませていた。
シンタローくんは話を聞いているのかいないのかわからない様子でパソコンをいじり、時々モモちゃんによる声かけに適当に相槌を打っている。
ここに住み始めてまだそんなに時間は過ぎていない。
一年と少しといったところだろうか。
けれども、私の中ではこの家が唯一の帰れる場所で、大切な空間で、大事な家族のいる場所なのだ。
鍋の中の具がグツグツと煮えていくのを眺めながら、私もまたカノくんが話すのを耳に聞き入れ、ここに来る前のことをぼんやりと思い出していた。
もう何年も前のことのように思える、ひとりぼっちだったあの日々のことを。
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