舞姫
□乱舞…惨
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ナミとロビンを連れ、シェナは繁華街の中へと入って行った。
しばらく歩き進み、ふいに立ち止まりナミたちを振り返る。
「ここです」
そう言ってナミたちが案内されたのは、繁華街の中でも食品販売店が多く立ち並ぶ専門店街だった。
「あぁ、そうだわ。サンジくん食料調達するって言ってたっけ」
とナミが頷いて、ふいに頭を傾げてみせる。
「あら?でも、じゃあゾロはどうしてここに……―――って、ああ、なるほどね」
食料調達に関係のないはずのゾロがここに来た理由を考えて、頭を小さくひねったナミであったが、少し右方に酒専門店がちらほらと見えた瞬間に笑った。
「酒が目当てね、アイツ。…にしても、本当にずいぶんいろいろ揃っているのねぇ」
辺りを見渡して、ナミは感心するようにそう溢した。
繁華街と呼ばれるだけはあって、色んな店が立ち並び、それぞれで活気を見せている。
道行く人々も大荷物をひっさげて歩いているし、楽しそうだ。
すると、隣でシェナも小さく笑っていた。
「ここ繁華街は、この島でも二つとない賑わいを見せている専門店街なんですよ。飲食店を営んでいる人たちの拠り所になっているんです。ここに来れば、大概のものは手に入りますから」
楽しそうに笑って、シェナはそっと辺りを見渡した。
「お仲間さんは食料を調達するためにここへ来たんですよね……?でしたら、もしかするとあの店かもしれませんよ」
そう言ってシェナがスタスタと一つの店に向かって歩き出す。
シェナが進んで行った先には、ひときわ大きな食品専門店があった。
「この店は何でも揃うと評判なんです。もしかしたら、評判を聞き付けてここへ来てるかもしれませんよ」
というシェナの推測を頼りに、店の入り口で聞き込みを開始した。
そして意外にもすぐに情報が手に入った。
『中で金髪の兄ちゃんが大量の食料を買い込んでいたぞ』
と、拍子抜けするほどあっさりと、サンジらしき人物の居場所がわかってしまった。
「あの兄ちゃん、いったいどれだけ買い込む気なんだろうなぁ」
なんて言いながら、小さな食事屋を営める愛嬌溢れるオジサン……ザシムが、シェナに笑って話してくれた。
そんな二人の会話を聞いていたナミは、ふいに深い安堵の息を吐いた。
「十中八九、いえ、十割方サンジくんだわ。良かったぁ。でも、問題なのはゾロね」
言って、笑っていたナミはとたんに疲れたようなため息をついて額を押さえる。
シェナが心配げに表情を曇らせると、ナミが肩をすくめて笑った。
「あいつ、こんな小さな島でもすぐ迷子になるのよ」
苦笑を浮かべるナミに、シェナはふわりと微笑んだ。
「一族が総出で情報を集めていますから、きっと大丈夫です。すぐに見つかりますよ…―」
「天使!?」
「え……―――?」
ナミを安心させるべく微笑んだシェナと、額を押さえるナミの真横から、ふいに大量のハートが飛んで来た。
というより、そんなオーラが飛んできた。
突然響いた声に驚き、シェナが専門店の入り口に視線を流せば、そこには金髪の青年が大きな荷物をこれでもかと言うほどに持ち上げ立っていた。
ザシムの言っていた通りの姿である。
だがそんな彼は、目をハートにして、ナミとシェナの側へ回転とスキップを合わせながら駆け寄ってきた。
「んナミすぁあん!!そして隣の美しいお嬢すぁあんっ!!ああ天使が二人も……素敵だぁっ」
と、くねくねと腰を揺らすサンジに若干……否、かなりドン引きしながら、シェナはひきつった笑顔を浮かべ応えた。
「こ、こんにちは。あの、あなたがサンジさん……ですか?私、グライアス・シェナと言います」
そう曖昧に笑ってみせれば、サンジは更にハートを飛ばしてきた。
な、なんなんだろうっコノ人っ……―――!!
生きてきてこれまでの人生に、こんなにもくねくねした人を見たことがなかったシェナは、少し後退り気味で彼と対面してしまう。
「シェナちゃんか…名前もなんて素敵なんだっ!!神様ありがとうっ」
などと、意味不明の叫びにもいちいち後退りするシェナ。
「な、ナミさんっ」
そう口をぱくぱくさせてナミを見れば、ナミは至ってケロっとしていて、更にシェナを動揺させた。
「サンジくん、良かった。探してたのよ。ねえ、近くでゾロを見なかった?」
辺りを見渡しながら、ナミがサンジにゾロの居場所を尋ねた。