magic of destiny

□第一章 全てを知る者
1ページ/8ページ




どこか遠くで、誰かの叫び声が響いた……。


男と女と、小さな赤ん坊の啼き叫ぶ声……―――


…誰……―?


重く沈むその意識の中で、次々と浮かんでは消えていく沢山の声。


まるでそれらの出来事を説明するかのように、聞こえてきた声に続きとてつもない量の情報の波が意識の中へと流れ込んできた。


映像はフィルムのように次から次へと流れていき、止めどなく意識の中に溢れていく。


ボヤけた視界に、額に雷型の傷を負った赤ん坊が映り込んだ。


そしてその側には、無惨にも横たわる母親らしき女の姿がひとつ。


更には苦痛にもがき死に恐怖する男が視界に入り、最後には彼が真っ暗な闇に吸い込まれていくのが見えた。


モノクロだったその映像に、次第に色が付き始める。


とたん、時が壊れたかのように時間が急速に進んでいった。


傷を持つ少年はどんどんと歳を取っていき、そんな彼の前に、様々な悲劇と親しい人間たちの死が巻き起こる。


哀しみが支配するその世界で、それでも果敢に戦い続けた少年は沢山の愛や友情に包まれ、悪の根元とも言える男を再び闇に葬り去った。


最初に闇に消えたはずのあの男を、今度こそ、永遠に……―――


そしてその全てが終わり、取り返せないものの多さに悲しむ少年の姿が見えた。


彼のやるせない気持ちが、この意識の中に流れ込んでくるようなそんな不思議な錯覚を覚え、彼の映る映像に終わりが来た頃には、言い表しようのない感情がその意識の全てを支配していた。


切ないような、苦しいような、悲しいような……。


なんとも言えない辛い感情に、ふいに涙が溢れた。


どうしてこんなものを……―――


身に覚えのない記憶を、どうして自分に見せたのか。


今見た映像は全て、あの少年が過ごした過去の記憶なのだと、どうしてだかそう感じていた。


そしてその過ぎた過去を自分に見せた意味は何なのか……―――


何故、こんな風に意識の中に勝手に流れ込んで来たのか……。


理解する間もないまま、記憶はプツリと途絶え闇に落ちていった。


けれど最後にふと。


そう言えば自分は何者だったのだろうかという疑問が浮かんだが、それさえも闇色の深い沈黙に阻まれ、とうとうその意識も途絶えてしまった…。








 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ