magic of destiny
□第一章 全てを知る者
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「アルバス…」
あまりのショックに崩れ落ちたリディシアの横で、マクゴナガルが静かにダンブルドアを呼んだ。
ダンブルドアは「うむ…」と小さく零し、虚ろに顔を歪めるリディシアに一歩近付いた。
恐る恐る顔を上げたリディシアの前にしゃがみこみ、ダンブルドアは彼女の頭をふわりと撫で、優しく問いかけた。
「リディシアよ、先ほど眠っていたと言っていたが、どこで眠っていたのかわかるかな?」
そう尋ねながら、ダンブルドアは一つの過程を考えていた。
マクレガン一族は伝説と呼ばれるほど神秘に満ちた一族であった。
もしかすると、今の彼女は…。
そこまで考え、後は彼女の返答から答えを導ければ良い。
「良ければその羊皮紙の話を、ワシに詳しく聞かせては貰えんかのう?」
優しく微笑み、リディシアの手を取り立ち上がらせる。
ダンブルドアはそのままリディシアをソファーまで引き連れ、対面するように座らせた。
マクゴナガルはその横に立ち、リディシアの顔を心配そうに見つめている。
混乱から精神を引き戻し、リディシアは目覚めた時からダンブルドアに会うまでのくだりを詳しく話して聞かせた。
リディシアが話し終わると、マクゴナガルは信じられないといった顔をしていたが、逆にダンブルドアは的中した答えにニヤリと笑った。
「なるほど、なるほど。実に不思議な話じゃ」
ちっとも不思議には思っていないような口調に、リディシアもマクゴナガルも首を傾げ訝しんだが、ダンブルドアはひとり満足そうに笑っていた。
「リディシアよ。恐らく君は…。まあ、これはワシの憶測なのじゃが」
イタズラを考えついたかのような茶目っ気ある顔で、ダンブルドアはリディシアに小さくウィンクする。
「恐らく、君は100年もの間、あの部屋で眠って居たのだろう」
そして羊皮紙の口振りから察するに。
「そしてどうやら君は、眠って居る間に若返ってしまったようじゃの」
簡単に言ってのけるダンブルドアに、リディシアは半ば唖然とした。
そんなことが、まさか、起こりうる訳がない。
そう考えたが、完全に否定出来ない辺り、少なからず自分もそう思っているのかもしれない。
「さて、今後のリディシアの身の振り方についてじゃが…。ミネルバ、我が校に入学させてはどうだろうか」
再びイタズラを思い付いたような顔で、ダンブルドアがニヤリと笑った。
マクゴナガルは突然の彼の言い出しに明らかに驚いた表情を見せたが、すぐに頷いた。
「それがよろしいかと存じます。今年はポッターが入学しますが、特に問題はないでしょう」
そう言って、マクゴナガルはリディシアに向かって微笑んだが、リディシアの反応は真逆だった。
「ポッター……?ハリー・ポッターですか?」
そんなバカな。
とは思っても、嫌な予感がした。
彼は過去の人間のはずだ。
あの記憶は、彼の記憶が自分に流れ込んで来ただけであり、意味は無いはずだ。
けれどその思いなどとは裏腹に、マクゴナガルとダンブルドアが再び目を見開きリディシアを見つめていた。
最悪な予感が的中したことを、リディシアは二人の顔を見て知ってしまった。