magic of destiny
□第三章 ダイアゴン横丁
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「制服を買った方がいいな」
と、ハグリットが『マダムマルキンの洋装店―普段着から式服まで』という看板をあごで指した。
それから青い顔をして、ハリーとリディシアに眉をひそめながら続けてこう言う。
「なあ、二人とも。『漏れ鍋』でちょっとだけ元気薬をひっかけてきてもいいかな?グリンゴッツのトロッコにはまいった」
本当に吐きそうな顔をしてそう言ったハグリットに、頷かないわけにはいかない二人は素直にその願いを受け入れる。
一旦ここでハグリットと別れ、二人は高鳴る心音にどぎまぎしながらマダム・マルキンの店へと入っていった。
藤色ずくめの服を着た愛想のよいずんぐりした魔女が、二人を見てニコニコと声を掛けてきた。
「二人とも、ホグワーツなの?」
と少し高い声で尋ねられ、リディシアとハリーが口を開こうとしたとたん、またマダム・マルキンが言葉を続けた。
「全部ここで揃いますよ……もう一人お若い方が丈を合わせているところよ」
と、マダム・マルキンは店の奥の方にいる男の子に視線を流した。
青白い、あごのとがった男の子が踏台の上に立ち、もう一人の魔女にローブを着せられている。
隣の踏台に立たされたハリーに、少年がふいに声を掛けてきた。
「やあ、君もホグワーツかい?」
「うん」
と、ハリーは答える。
リディシアはそのまた隣に立たされ、少年の視界から外れていた。
「僕の父は隣で教科書を買ってるし、母はどこかその先で杖を見てる」
気だるそうな、気取った話し方をするその少年にリディシアは見覚えがあるような気がした。
なんだろう?
どこかで見たことがあるような気がするが……。
と、ハリーに話しかけ続ける少年をじっと見ていた。
「一年生が自分の箒を持っちゃいけないなんて、理由がわからないね。父を脅して一本買わせて、こっそり持ち込んでやる。君は自分の箒を持ってるのかい?」
「ううん」
ハリーの表情が少し険しくなってきた。
「クィディッチはやるの?」
「ううん」
少年からの質問に、ハリーは「ううん」しか答えていない。
「僕はやるよ……父は僕が寮の代表選手に選ばれなかったらそれこそ犯罪だって言うんだ。僕もそう思うね。君はどの寮に入るかもう知ってるの?」
「ううん」
あ、ハリーの表情が少し嫌そうな顔に変わった。
「まあ、ほんとのところは行ってみないとわからないけど。そうだろう?だけど僕はスリザリンに決まってるよ。僕の家族はみんなそうだったんだから……ハッフルパフなんかに入れられてみろよ。僕なら退学するな。そうだろう?」
「ウーン」
と、情けない顔をしながら答えたハリーに、リディシアが助け船を出そうかと口を開きかけた時だった。
「ほら、あの男を見てごらん!」
少年が窓の外を顎でしゃくり、ハリーとリディシアが視線を向けるとそこにはハグリットが立っていた。
ハリーとリディシアの姿にニッコリと笑いながら大きなアイスを見せ、『これがあるから中には入れない』という手振りをする。
「あれ、ハグリットだよ」
とハリーは少し誇らしげにそう言った。
「ホグワーツで働いてるんだ」
と説明してやると、少年は嫌みな笑みを浮かべた。
「ああ、聞いたことがある。一種の召遣いだろ?」
「森の番人だよ」
皮肉な言い方をする少年に、ハリーは眉をしかめた。
リディシアには、今のでハリーがこの少年を嫌いになったのがわかってしまった。
「そう、それだ。言うなれば野蛮人だって聞いたよ……学校の領地内のほったて小屋に住んでいて、しょっちゅう酔っ払って、魔法を使おうとして自分のベッドに火をつけるんだそうだ」