magic of destiny

□第四章 9と3/4番線
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ダーズリー家に戻ってきたハリーの一ヶ月間は、とても楽しいものではなかった。


まるで空気のように無視をされ、部屋にこもり続けた一ヶ月だった。


ふくろうの名を『ヘドウィグ』と名付け、魔法史を読みふける毎日。


毎晩寝る前に壁に貼った暦の日付を一日ずつバツ印で消し、九月一日までの日数を数えていた。


時折、リディシアに貰ったふくろうのキーホルダーを眺めてはホグワーツ入学が待ち遠しくなり、ハリーは窓の外を何度も見つめた。


八月最後の日、ハリーはおじさんたちにキングズ・クロス駅に行くと話さなければならなくなり、ハリーに気付いたダドリーは悲鳴をあげて部屋から飛び出していった。


意外にも、おじさんは唸りながらもあっさりとキングズ・クロス駅に連れていくことを承諾し、いくつかの質問を受け、ハリーは部屋に戻った。


部屋の中で、ハリーは考えていた。


おじさんは、『九と四分の三番線』などないと言った。


けれど切符にはそう書いてあるし、それ以外に電車の番線は書かれていない。


少し不安になりながら、それでも興奮と緊張でハリーは次の日の朝、五時に目が覚めた。


あれこれしているうちに時間は過ぎ、荷物も全て車に乗せて、ペチュニアおばさんに言い含められたダドリーの隣に座り、ハリーはキングズ・クロス駅に向かった。


「そーれ、着いたぞ、小僧。九番線と……ほれ、十番線だ。お前のプラットホームはその中間らしいが、まだできてないようだな、え?」


厭らしく言ったバーノンおじさんだったが、まさにその通りだった。


「新学期をせいぜい楽しめよ」


と、バーノンおじさんはさっきよりもにんまりと笑い、さっさとハリーの元を去っていってしまった。


ハリーがどうしたら良いかわからずに駅員を捕まえ、ホグワーツの場所を聞いたが駅員は知らないと答えた。


途方に暮れるハリーに、ふいにこんな言葉が耳に飛び込んできた。


「……マグルで込み合ってるわね。当然だけど……」


と、ふっくらしたおばさんが、揃いもそろって燃えるような赤毛の四人の男の子に話しかけていた。


胸をドキドキさせ、ハリーはカートを押してみんなにくっついていった。


と、みんなの話が聞こえるぐらいのところで立ち止まった時、ふいに肩を誰かに叩かれた。


「うわ!スミマセン、違うんです僕……っ」


そうハリーが謝った時、笑い声が聞こえた。


「違うって何が?大丈夫?ハリー」


鈴の鳴るような笑い声に、ハリーはハッとして瞳を見開いた。


「リディシア!!」


「久しぶり、ハリー。元気そうで嬉しい」


ニコニコ笑い、リディシアがハリーに手を振った。


まさに助け船とばかりに、ハリーは嬉しさに表情を輝かせる。


「良かった!九と四分の三番線が解らなくて困ってたんだ」


と、そう囁くハリーにリディシアは苦笑を零した。


「だと思った。ハグリットったら、またハリーがマグルとして育てられたってことを忘れていたみたいなの。それで、ミネルバさんにお願いして、私がここに来たってわけなんだけど」


ちら、とリディシアはあの赤毛の家族を見遣り、またにっこり笑った。


「あの柱が九と四分の三番線みたいだね」


と指を指す。


ちょうど、ひとりがその柱に向かってカートを押し走っていく姿が見えたが、人だかりのせいで消えた瞬間を見逃してしまった。


「うーん。実は、私も良くは教えて貰ってないんだよね……」


リディシアが恐ろしいことを呟き、ハリーはますます赤毛の家族から目が離せなくなった。


「フレッド、次はあなたよ」


と、ふっくらしたおばさんが言ったのが聞こえた。


「僕フレッドじゃないよ、ジョージだよ。まったくこの人きたら、これでも僕たちの母親だって良く言えるな。僕がジョージだってわからないの?」


「あら、ごめんなさい、ジョージちゃん」


「冗談だよ。僕フレッドさ」


なんて親子の会話を聞き、リディシアがこっそり笑った。


フレッドという男の子は歩き出し、双子の片方が急かすように後ろから声を掛けた。


「急げ」


といったその次の瞬間には、双子の姿も消えていた。


その次の男の子もあっという間に姿を消し去ってしまい、ハリーとリディシアは顔を見合わせる。


こうなれば他に手はないと、二人はおばさんに近寄り声をかけた。


「あら、こんにちは坊や。ホグワーツへは初めて?ロンもそうなのよ」


と、おばさんは最後に残った男の子を指差した。


背が高く、ひょろっとしてそばかすの多い子だ。


「私たち、プラットホームへの行き方を知らなくて」


リディシアが答え、おばさんは頷いた。


ハリーも頷き返し、おばさんに答えを求める。





 
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