magic of destiny

□第四章 9と3/4番線
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喧嘩厳禁。


そんな意を込めて二人に微笑めば、何故か二人は軽く縮み上がった。


いやだ、私ってば二人に怖い人認定されてる……。


「よろしければ、着替えるから出てってくれないかな?」


ロンが噛みつくようにハーマイオニーを睨みながらそう言った。


「いいわよ。……みんなが通路でかけっこしたりして、あんまり子供っぽい振る舞いをするもんだから様子を見に来ただけよ。彼女はともかく、あなたたちはね」


ロンとハリーを小バカにするようにツンとした口調でそう告げて、ハーマイオニーはコンパートメントを出ていった。


が、すぐに戻ってきてロンを見詰めると鼻を指さしつっけんどんに言い捨てる。


「ついでだけど、あなたの鼻、泥がついてるわよ。気がついてた?」


そう言い残して、今度こそハーマイオニーは姿を消した。


ロンは憤慨にまた顔を真っ赤にして、ハーマイオニーの居なくなった戸を睨み続けていた。


車窓の景色が少しずつはっきりと見え始め、目的地に近付いた汽車が徐々に速度を落としていることに気付いた三人は、代わり番こでコンパートメントを出てローブに着替えた。


ロン以外は新調のローブを身にまとい、ホグワーツの制服に着替えたというそれだけで、三人の気分は格段に跳ね上がっていた。


これから始まるホグワーツでの生活を思えば、胸がドキドキしないわけがなかった。


「あと五分でホグワーツに到着します。荷物は別に学校に届けますので、車内に置いていってください」


というアナウンスが流れ、リディシアは改めて胸を高鳴らせた。


が、あることを思い出す。


そう言えば私、荷物は塔に置きっぱなしだった気がする……。


今朝ミネルバにお願いして姿現しをし、ハリーを迎えに来たまでは良かったが、塔に置いてきた荷物はどうすれば良いのだろうかと急に不安になった。


さっきまで笑顔を絶やさなかったリディシアが、急にその表情を暗くさせたことで、ハリーとロンの緊張は最高潮に達してしまった。


汽車が完全に停車し、ごちゃごちゃな人込みの中を必死でかき歩き外へ出ると、冷たい夜の空気が三人の緊張を撫で上げた。


ユラユラと揺れるランプが近付いてきて、やがて耳に懐かしい声がハリーとリディシアを出迎えた。


「イッチ(一)年生!イッチ年生はこっち! ハリー、元気か?」


ハグリットの大きなひげ面が、ずらりと揃った生徒たちの頭の向こうから笑いかけた。


リディシアの姿に気付くと、また同じように笑いかけてくる。


「ちゃんと会えたみてえだな、リディシア。良かった良かった。 さあ、ついてこいよ、足元に気をつけろ。いいか、イッチ年生、ついてこい!」


険しくて狭い小道を、みんなは滑ったりつまずいたりしながら必至でハグリットの後に続いた。


しばらくそうやって進んでいると、ハグリットが声をあげた。


「みんな、ホグワーツがまもなく見えるぞ。この角を曲がったらだ」


「うぉーっ!」


ハグリットの声に歓声があがり、狭い道が開けると大きな黒い湖のほとりに着いた。


向こう岸に高い山がそびえ、そのてっぺんに壮大な城が見える。


大小さまざまな塔が立ち並び、キラキラと輝くまどが星空に浮かび上がっていた。


リディシアはひとつの塔を見詰め、また荷物のことを考えた。


……式の後に取りに行けるだろうか……―――


部屋に置きっぱなしの荷物を思い頭を悩ませていると、ハグリットの声が夜の闇にドンと響いた。


「四人ずつボートに乗って!」


岸辺に繋がれた沢山の小舟を指さし、ハグリットが一年生たちを誘導していく。


ハリーとロンが先にボートに乗り込み、続いてそこにハーマイオニーとネビルが乗り込んだ。


取り残されたリディシアは迷わずハグリットの元へ行き、巨身の隙間を狙ってボートに滑り込む。


ハリーとロンがリディシアを探しているのを見つけ、リディシアはハグリットの脇の下から首を出して手を振った。


「ホグワーツで合流しましょう!」


ざわつく喧騒の中、ロンとハリーに聞こえたのかはわからないが、リディシアは湖に落とされないようハグリットにしがみつく。


「みんな乗ったか?よーし、では、進めえ!」


ハグリットの声でボート船団は一斉に動きだし、鏡のような湖面を滑るように進んでいった。


向こう岸に近付くにつれて、城が頭上にのしかかってくる。


「頭、下げえーっ」


ハグリットのかけ声に、みんな一斉に頭を下げた。


するとボート船団は蔦のカーテンをくぐっていき、その陰に隠れてポッカリと空いている崖の入口へと進んだ。


城の真下らしきトンネルをくぐると、地下の船着き場に到着する。


ハグリットと共に岩の上に降りたリディシアは、ふとハグリットのポケットで何かが鳴いているのを聞いた。


近くを通りかかったネビルを捕まえ、ハグリットがポケットの中から鳴き声をあげる゙何がを取りだし差し出した。


「ホイ、おまえさん!これはお前のヒキガエルかい?」


「トレバー!」


大喜びで手を差し出したネビルに笑い、ハグリットは生徒たちを再び導いた。


石段を登り、巨大な樫の木の扉の前に集まると、ハグリットは大きな握りこぶしで城の扉を三回叩いた。









 
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