magic of destiny
□第六章 魔法薬の先生
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目が覚めて、時計を見ると朝食の時間が迫っていた。
慌ててトランクを漁って制服とローブを身にまとい、リディシアは部屋をあとにした。
ハーマイオニーたちはすでに起きて談話室に降りていて、ハリーもロンもそこにいた。
「おはようリディシア」
「おはよう」
ロンとハリーに挨拶し、リディシアはふと談話室を見渡した。
明るい時間に見る談話室は、夜に見る談話室と少し違う。
新鮮に思い、口許を緩めたリディシアに、双子が声をかけてきた。
「「おはよう、姫!!今日も見目麗しいね」」
「あ、おはよう。フレッド、ジョージ」
爽やかに挨拶され、リディシアは『姫』という単語に顔をしかめながらも、微笑んで返す。
じゃあまたね。
と、さっさと談話室を出ていった双子を見送り、横から感じるロンからの視線に振り返る。
「どうかした?」
「君、いつの間にあの二人と仲良くなったの?」
眉間にシワを寄せ、ロンが怪訝な表情を浮かべていた。
「仲良くなったっていうか……なんか、気が付いたら側に居たの。でも、面白い人たちだわ」
そう言って笑うリディシアに唖然とし、ロンは肩をすくめただけであとは何も言わなかった。
「あら、起きたのね。一度声を掛けたけど、全く反応しなかったから少し心配してたの」
すれ違う形でハーマイオニーを見付け、彼女はリディシアを見るなりそんなことを言った。
少し嫌味に感じた声にロンが顔をしかめ、ハリーが表情を重くさせたがリディシアは笑った。
「そうだったの。わざわざありがとう、グレンジャーさん。次は気を付けるわね」
ニコニコ笑顔を返し、小さく礼を取れば、ハーマイオニーは僅かに頬を緩め「そうね、ああそれから、おはよう。またね」と大量の教科書を持って談話室を出ていった。
「君、今のムカつかなかったの?」
ロンが驚いたようにリディシアを見遣り、無意識か左右に首を振っていた。
「ムカつくって、いったい何に?彼女は親切をしてくれたんじゃない。感謝こそすれど、ムカつく理由はどこにもないわ」
逆に驚くリディシアに、ハリーとロンが顔を見合わせ、瞬きを繰り返す。
そんな様子に小さく笑って、リディシアは二人に首を傾げてみせた。
「彼女、きっとまだ緊張しているんだと思うの。だってマグル出身だって言っていたでしょう?知らないものが多すぎて、戸惑っているのよ」
根は優しい娘だろうと告げて、リディシアも大広間へ向かうべく準備をした。
「性格が悪いの間違いなんしゃないかな」
「さあ?」
なんて会話が後ろで聞こえて、リディシアはこっそりため息を吐いた。
この先、かけがえのない仲間になるというのに、彼らはまだ知らないからそう言えるのだ。
うっかり未来に起こることを言ってしまいそうで、リディシアは気が気じゃなかった。
大広間での朝食を終えて、授業を受ける教室へ向かっていた三人の耳に、ふとこんな会話が届いた。
「見て、見て」
「どこ?」
「赤毛ののっぽと、黒髪の女の子に挟まれている子」
「メガネをかけてるやつ?」
「顔見た?」
「あの傷を見た?」
教室が開くのを待っていた生徒たちが、爪先立ちでハリーを見ようとしたり、すれ違ったのにわざわざ戻ってきてジロジロ見たりして、三人は居心地の悪い思いをしていた。
自分たちが向かうべき教室を探すのも一苦労だというのに、そんなことをされていては気が散って迷子になりかねない。
ホグワーツには百四二もの階段があり、さまざまな形をしていて、飛び越えたり、タイミングを測ったりしなければならず、本当に歩くのが大変だった。
リディシアは基本、校長室までの道のりと、スネイプ先生の準備室までの道のりしか通ったことがなく、上の階については無知であるため、気を抜けばすぐに迷子になりそうだと思っていた。
さまざまな扉もあり、これにもいろいろと仕掛けがあって大変だ。
ピーブスの悪戯にも困り果て、フィルチにお怒りをくらったり、それをクィレル先生に助けて貰ったりと、なかなか濃い一日を過ごした。
ようやく各クラスへの道のりを覚えると、今度は授業に着いていくのが問題となる。
リディシアは何故かスイスイと授業の内容を脳に詰め込んでいけたが、ハリーとロンが難しい単語が出る度に顔をしかめたのも見逃さなかった。
筆記は勿論、杖を使うだけじゃなく、本当にいろんな授業が行われている。
水曜日の真夜中に行われる、望遠鏡を使った夜空の観察や、星の名前や惑星の動きなどを勉強する授業。
週三回の、ずんぐりした小柄なスプラウト先生と城の裏にある温室に行き、「薬草学」を学び、不思議な植物やキノコの育て方や、用途を教えられた。