magic of destiny

□第七章 飛行訓練
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―飛行訓練は木曜日に始まります。グリフィンドールとスリザリンとの合同授業です―


談話室の掲示板に貼られたお知らせを見て、リディシアを除いたグリフィンドール一年生たちは、どんよりと空気を重くしていた。


「そらきた。お望みどおりだ。マルフォイの目の前で箒に乗って、物笑いの種になるのさ」


吐き捨てるようなセリフを零して、ハリーの表情はさらに重く暗いものになった。


失望の色を浮かべるハリーに、ロンが肩をすくめて呟く。


「そうなるとはかぎらないよ。あいつ、クィディッチがうまいっていつも自慢してるけど、口先だけだよ」


もっともなロンの言葉に、ハリーが少し表情を緩める。


リディシアは箒がどんなものだかを考えていて、その会話には加わらなかった。


確か、塔の家代わりに使っていた部屋に、箒について書いてある著書がいくつかあったはず。


「リディシア?君もそう思うだろう?」


「へ?」


箒の乗り方をぼんやり考えていたリディシアの肩を、ロンがぶっきらぼうに叩いたことで現実に意識を戻された。


だが、リディシアは彼らの会話を聞いてなどいない。


罰が悪そうに肩をすくめて返し、リディシアは素直に謝る。


「ごめんなさい。考え事をしていて、話を聞いてなかったわ」


しゅんと項垂れるリディシアに、何故かロンの方が申し訳ない顔をして首を振った。


「あ、いや。うん、それなら良いんだ。ゴメン」


あまりにも普通に一緒に居るものだから、ロンは一瞬忘れかけていた。


リディシアがどんなに魅力的な女の子だったのかということを。


困ったような顔で、上目遣いで謝られて、ロンは胸がドキドキ騒ぐのを慌てて鎮めた。


掲示板から離れ、談話室のソファーに座った三人。


リディシアが読書でもしようかと、部屋から数冊持ってきていた本を開きページを捲ろうとした時だった。


ハーマイオニーの箒の乗り方についての講義が始まり、何となく耳を傾けてみる。


驚いたことに、ハーマイオニーは本の内容を全て暗記しているようで、リディシアの読んだことのある「クィディッチ今昔」の内容をすらすらと話して聞かせていた。


ネビルが必死でハーマイオニーの話を聞き、他はうんざりした様子だ。


朝食の時間が近付き、リディシアは本を読むのを諦めた。


大広間でも続いていたハーマイオニーの講義に、リディシアは興味もなく聞き流し、大皿に並べられたアップルパイに手を伸ばす。


甘いものを手にクラムチャウダースープを啜るという、そんな信じられないような食事の取り方にロンが顔をしかめ、ふいにフクロウが飛んできた。


ネビルの前に止まり、小さな小包を落としていった。


中から現れたのは、ビー玉ほどの小さなガラス玉。


「『思い出し玉』だ!ばあちゃんは僕が忘れっぽいことしってるから……何か忘れてると、この玉が教えてくれるんだ。見ててごらん、こういうふうにギュッと握るんだよ。もし赤くなったら……あれれ?」


ネビルが言い終わる前に玉は真っ赤に光だした。


「何かを忘れてるってことなんだけど……」


そう言ってネビルが頭を捻らせた時、マルフォイがグリフィンドールのテーブルのそばを通りかかり、玉をひったくった。


ピクリ。


と、リディシアは反応しマルフォイを見た。


ハリーとロンは弾けるように立ち上がり、マルフォイを睨み付ける。


二人とも喧嘩する気……?


そんな色を含めリディシアが二人を見ると、視線に気付いたハリーがすかさずロンを小突いた。


ちょうどその時、ミネルバが現れマルフォイとロン、ハリーを見た。


「どうしたんですか?」


「先生、マルフォイが僕の『思い出し玉』を取ったんです」


ネビルが困り顔でそう言えば、マルフォイはとたんにしかめっ面になり、すばやく玉をテーブルに戻した。


「見てただけですよ」


そう言うと、クラッブとゴイルを従えて逃げていった。


リディシアはため息混じりにそれを見送り、すっかり冷めてしまったホットミルクを飲み干した。




―*―*―




午後三時半。


ハリーもロンも、ついでにリディシアも、グリフィンドールの寮生たちと一緒に、初めての飛行訓練を受けるために正面階段から校庭へと急いだ。


よく晴れた少し風のある日で、足下の草がサワサワと波立っていた。


傾斜のある芝生を下り、校庭を横切って平坦な芝生まで歩いて行くと、校庭の反対側には「禁じられた森」が見えて、遠くの方に暗い森の木々が揺れていた。


グリフィンドール寮生が到着する前に、すでにスリザリン寮生が到着していた。





 
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