magic of destiny
□第七章 飛行訓練
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ハリーは黙って頷き、リディシアは少し表情を緩ませた。
なんだ、お叱りを受けるワケじゃなかったんだ。
少し興奮気味に話を続けるミネルバにホッと胸を撫で下ろし、リディシアはふと先の未来を思い出そうと頭を捻らせる。
良く考えれば、ハリーのたどる未来は全て自分の頭の中にあるはずなのだ。
怒られないとわかっていたはずなのに、どうしてあんなにも不安を感じたのか……。
リディシアは眉をひそめ、自分の愚かさに今度はため息を吐きたくなる。
だが、未来を知っていても、ひとつ問題もあった。
ハリーの生きた世界に、リディシアは存在していなかったはずなのだ。
所々で話が変わっているのは少しだが気付いていた。
軽率な行動はやめた方が良いと自分で自分を戒め、ふいに向けられていた視線に気付きハッと我に返る。
「ミス・マクレガン?」
「へ?」
ミネルバに名を呼ばれ、ウッドとハリーから訝しげな表情を向けられ、リディシアは間抜けな返事を返してしまった。
「あ……スミマセン、少しボーッとしていました。……なんでしょう?」
尋ねれば、ミネルバは呆れたようにリディシアを見遣り、ついではっきりとこう言った。
「貴女もチームに入りなさいと言ったんですよ、ミス・マクレガン」
「ぇえ!?でも、ミ……マクゴナガル先生、私はクィディッチは……―」
言いかけて、ハリーに遮られた。
「リディシア、一緒にやろうよ!お願いっ」
一年生が自分一人だけじゃ心細いと、ハリーが必死に目で訴えてきた。
けれどリディシアはなおも首を振る。
「そんな、ハリー!私、自分がスポーツに向いているだなんて思えないわ」
これまでの記憶が一切ないのだ。
自分がスポーツが出来る人間だったかなんてまだわからない。
箒に乗ったのも今日が初めてであり、偶然うまくいったとしても、次はどうなるかもわからないのだ。
不安から眉をひそめたリディシアに、ミネルバは目を輝かせて強く断言した。
「向いていますとも。貴女はあのマクレガンの血を受け継いで居るのですから。それに、あの飛行を見せておいて無理だとは言わせませんよ?ポッターが無傷だったのは、貴女の活躍ありきの話なのですから」
゙あの゙と言われてもピンと来ない。
マクレガン一族の話は、アルバスに聞かされて初めて知ったものだし、どんなことをしてきたから有名である……などという詳細は、一切知らないのだ。
それなのに、いつの間にか話は交わされていたらしく、ウッドまでリディシアに期待の目を向けて声を弾ませた。
「話を聞いている限り、君にはチェイサーの素質がありそうだ!どうだい?最初は輔佐で良いから、入ってみないかい?」
ミネルバ、ハリー、ウッドから、期待のこもった目を向けられて、リディシアはついに項垂れた。
「……そんなに言われたら……断れないじゃないですか」
期待されることは悪いことじゃない。
むしろ良いことだし、可能性があるから望まれているということだ。
本当に、少しでも自分に可能性があるのなら……と、リディシアは懸命に良い答えを考えた。
けれど、うっかりハリーとミネルバを見てしまえば、決心はあっさりと決まってしまった。
「リディシア」
お願い。
と懇願するハリーの視線。
ミネルバの意味深な微笑……―――
「――…わかった!わかりましたよっ入りますっ。それに……入らなかったら処分は考え直そう、とか思ってるのでしょう?マクゴナガル先生」
意味深な微笑に、若干脅しのような色がうかがえた。
こうなっては処罰を受けるより、少し視野を広げてみる方向に向かった方がマシである。
「ふふ。そのつもりでした」
そう笑ったミネルバに内心で苦笑しながら、リディシアは仕方なしにと頷いて返した。
「……従います」
「やった!」
「グリフィンドールのチームにヒーローとヒロインが入った!!」
と喜ぶハリーとウッド。
ヒーローはともかく、ヒロインとは何だろうと思いながらも、リディシアはかくして、クィディッチチームの一員になったのだった……。
ミネルバは新チーム生のハリーとリディシアを眺め、突然にっこりと笑った。
「あなたのお父さまがどんなにお喜びになったことか。お父さまも、素晴らしい選手でしたよポッター。それに、マクレガンは伝説では負けなしの一族と呼ばれていますから、これからが楽しみです」
ミネルバの言葉にガッツポーズを取るウッド。
リディシアとハリーは互いに顔を見合わせるのだった。