magic of destiny

□第ハ章 真夜中の決闘
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ミネルバから解放され、全ての授業が終わってから、みんながホールに集まり夕食を食べて居る中で、ハリーはロンにチームに入ったことを話して聞かせていた。

グラウンドを離れてから過ごした時間を事細かくロンに話すハリーを尻目に見ながら、リディシアは今日も双子に囲まれている現状に苦笑を溢す。

「まさか、シーカーだって?だけど一年生は絶対ダメだと……なら、君は最年少の寮代表選手だよ。ここ何年来かな……」

頭を捻らせたロン。

「百年ぶりだって。ウッドがそう言ってたよ」

と、ハリーがパイを掻き込むように食べながら、ウッドが興奮しながら話していた内容をポソリと零した。

そこで、リディシアの両サイドからひょっこりと顔を出した双子が、いやに楽しそうに声を揃える。

「「しかもその百年前の一年生シーカーが、姫の先祖なんだと!!」」

ウキウキと叫ぶ双子に額を押さえ、リディシアは軽く項垂れた。

絶対にその話題になると思った・・・───

ミネルバが『あの伝説のマクレガン一族』と言った意味を、リディシアは後々知らされたのだ。

百年前に一年生でシーカーを勤めたのはマクレガン一族の『ヴィクシム・マクレガン』という少年(今は亡き人間)であり、卒業するまでに様々な栄光を残したという。

彼の居た寮チームは七年間負けなしと言われるほどに、『ヴィクシム・マクレガン』は凄腕のシーカーだったと言われていたらしい。

他にも、マクレガンの一族でチェイサーを勤めた女性が居たらしく、彼女は『ヴィクシム・マクレガン』の双子の妹だったとか……。

何にせよ、マクレガンの名は、クィディッチのおかげで有名になったと言っても過言ではないのだろう。

「来週から練習を始めるんだってね」

「僕らビーターだけど、なんでも聞いてよ」

と、ジョージとフレッドが最高の笑顔をリディシアに向けた。

「……気乗りはしてないのだけど、やるからには目一杯頑張らせてもらうわ」

苦笑のまじった笑みを返して、リディシアは最後の一口であるブルーベリーパイを、もうすっかり温くなってしまったセイロンティーで飲み込んだ。

「今年のクィディッチ・カップはいただきだぜ」

フレッドがガッツポーズを取り、ジョージは小さく肩をすくめる。

「チャーリーがいなくなってから、一度も取ってないんだよ。だけど今年は抜群のチームになりそうだ。ハリー、君はよっほどすごいんだね。ウッドときたら、小躍りしてたぜ」

「姫に関しては、男子群が色んな意味で喜んでたな。まあ、気持ちはわかる。僕らも喜んでるからね」

フレッドとジョージは交互にそう言って、リディシアが食べ終わったのを見ると急に席を立った。

「じゃあな。僕たち行かなきゃ。リー・ジョーダンが学校を出る秘密の抜け道を見つけたって言うんだ」

「でもそれって、僕たちが最初の週に見つけちまったやつだと思うけどね。きっと『おべんちゃらのグレゴリー』の銅像の裏にあるヤツさ。じゃ、またな」

言うなり手を振って歩き出した双子。

リディシアも笑って彼らに手を振れば、双子は一度だけ振り返って大声をあげた。

「「今度姫にも教えるよ!!」」

そう言い残して去っていったフレッドとジョージに破顔して、リディシアは自然と頷いていた。

イタズラ過ぎる双子には着いていけないが、存外、自分自身もイタズラが嫌いじゃないことを最近知った。

そんなリディシアをロンが相変わらず複雑そうな顔をして見ていて、視線が合えば苦笑を零される。

「あなたのお兄さま方って素敵よね」

笑って視線に返せば、ロンは肩をすくめながらも頷いてくれた。

「あの二人、リディシアのことをとても気に入っているみたい」

はた目に見てバレバレなくらいの好意をリディシアに向けている。

リディシアは別に嫌ではないが、ロンは少し嫌に思うらしい。

そりゃ、自分の兄弟が同級生にくっつき回っていたら、複雑に思いもするだろう。

リディシアは何とも言えずに曖昧に笑って、アルバスお気に入りのハッカキャンディーを口に入れたのだった。







ロンたちよりも食の細いリディシアが『ごちそうさまでした』と空になったお皿を揃えた頃、背後から急に声が降ってきた。

けれどこれはリディシアに対するものではなく、リディシアの真向かいに座っているハリーに対する言葉だった。

「やあポッター、最後の食事かい?マグルのところに帰る汽車にはいつ乗るんだい?」

嫌味ったらしい声に、リディシアは顔も見ないでも彼が誰だかわかってしまった。

ハリーは彼を見るなり冷ややかな視線を投げ、冷めた口ぶりで今しがたやって来たスリザリンの三人組に返事を返す。

「地上ではやけに元気だね。小さなお友達もいるしね」

と、負けじと皮肉を返したハリーにリディシアは小さく眉をひそめた。

夢で見ていたからわかってはいたけれど、二人は本当に犬猿の仲だ。

背後でボキボキという拳を鳴らす音が聴こえ、リディシアはますます顔をしかめる。

「ハリー、わざわざ皮肉を含んで言わなくても良いじゃない。それに、ミスター・マルフォイ、あなたもよ。バラされればあなただって明日には汽車に乗るハメになるんだから」

クルリと身体ごと頭を巡らせて、リディシアがキッとマルフォイを見れば彼は青白い顔を更に蒼白にさせた。

「な、マクレガン……!!」

どうやらリディシアが居ることに気付いて居なかったらしい。

顔を見るなりそんな風に驚かれ、リディシアは思わず面食らった。

「あら、居ないと思ってたのね。私って案外影が薄かったんだわ」

なんて肩をすくめるリディシアをハリーとロンが笑って見遣り、マルフォイはほんのり顔を赤くさせて精一杯の強がりを吐き捨てた。

「ふん……。ポッター、別に僕は一人でだって君の相手になれる。ご所望なら、今夜だっていい…魔法使いの決闘をしてやるさ。相手には触れない、一対一でね」

ああでも、魔法使いの決闘だなんて聞いたこともないかな?

と嘲笑うマルフォイに、ハリーよりもロンの方が反応を示した。

「もちろん、あるさ。僕が介添人をする。お前のは誰だい?」

大胆不敵な面持ちでマルフォイを睨むロンに、リディシアは一瞬呆気に取られた。

ロンたら、マルフォイの前では強気なの……。

自然と零れた苦笑を頭を振って拭い、リディシアはマルフォイを一瞥した。

マルフォイはクラッブとゴイルの大きさを比べるように二人を見て、素っ気なくロンの問いに答える。

「クラッブだ。真夜中でいいね?トロフィー室にしよう」

いつも鍵が開いているからね……。

と簡単に言い捨てて、マルフォイはリディシアを一度だけ見るとゴツい二人を連れて去って行った。

「魔法使いの決闘って何だい?君が僕の介添人ってどういうこと?」

マルフォイが消えるなりハリーがロンにそう尋ねた。

リディシアは小さくため息を吐きながら部屋に戻る支度を始める。

魔法使いの決闘というのは、一対一で行われる魔法のぶつけ合いのようなもの。

いつだったか何かの本にそう書いてあったのを思い出し、リディシアは肩をすくめた。

学生同士の決闘などたかが知れているが、あまり耳に良いものじゃない。

どうして男の子って暴力的解決を求めるんだろう……。

「介添人っていうのは、君が死んだら代わりに僕が戦うっていう意味だよ」

なんて重々しく説明するロンの話を傍観気味に聞き流して、リディシアは荷物をまとめた。

段々いかがわしい会話になっていくのを頭痛を覚えながら無視をして、よっこいしょと立ち上がる。

と、ちょうどその時だった。



 
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