ゲットバッカーズ〜dream the world〜

□記憶の破片を取り戻せ@
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ある日の平日、午後。


ヘヴンに呼び出されホンキートンクへやって来た二人は、すでに揃っていた面子を見て嫌な予感を覚えた。


「………」


ヒラヒラ手を振るヘヴン。


何も言わずに無言で銀次の腕を引っ張り、店を出ようとする蛮。


それを銀次が慌てて止めた。


「ちょっ、蛮ちゃん!?」


まずいよダメダメっ!!俺らもうお金ないじゃんっ!!


と、切実な表情で蛮の腕を引っ張る。


振り返った蛮の瞳には拒否の念を浮かんでおり、それを見た銀次は泣きたくなった。


そろそろちゃんとしたご飯が食べたい……!!


ここ一週間、ろくな食事を取っていない。


コンビニやスーパーのごみを漁ったり、誰かが恵んだであろうチキンを犬から奪ったりと、まともな飯にはありつけていなかった。


普段はプライドが高くてかっこいい蛮ちゃんが、この時ばかりはホームレス顔負けな手段を使ってご飯を奪取するから、銀次はいつも悲しく思っていた。


「ヘヴンさんが電話でも言ってたじゃない。今回の仕事はかなりデカイから、当分金に困らずに済むって!!」


店の外で必死にすがりついてくる銀次に、蛮は深い溜め息を吐き、店内からこちらをじっと見つめているメンバーをちらりと眺めた。


工藤卑弥呼に、冬木士度、赤屍蔵人に、風鳥院花月。


このメンバーで組んだ仕事で、無事に遂行出来た奪還は何一つとしてない。


蛮はこめかみをピクピク言わせ、すがりつく銀次を見下ろし冷静に考えた。


確かに、このままでは人としてダメな気はする。


路上生活も、確実に人間性を破壊していっているわけで………。


そこまで考えて、蛮はふと銀次との約束を思い出す。


『マンション借りてさ、二人で優雅に暮らしたいよね!!』


そう屈託なく笑い、蛮も確かにそれに頷いた。


ちっ。


軽く舌打ちを落とし、至極嫌そうに頭をガシガシと掻くと蛮は眉間に深いシワを寄せ、店内のメンバーをキッと睨んだ。


「てめぇら足引っ張ったらぜってー許さないからな!!」


血が滲みそうなほどに拳を握りしめ、本当に嫌そうに叫んだ蛮に卑弥呼がうんざりとため息を返す。


蔵人は薄気味の悪い笑みを切れ長の瞳にたたえ、士度は蛮を睨み花月が銀次にニコニコと手を振った。


これからやって来る壮絶な運命があるとも知らずに、六人はヘヴンの持ってきた依頼を引き受けるのだった。





 
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