ゲットバッカーズ〜dream the world〜
□記憶の破片を取り戻せ@
1ページ/7ページ
ある日の平日、午後。
ヘヴンに呼び出されホンキートンクへやって来た二人は、すでに揃っていた面子を見て嫌な予感を覚えた。
「………」
ヒラヒラ手を振るヘヴン。
何も言わずに無言で銀次の腕を引っ張り、店を出ようとする蛮。
それを銀次が慌てて止めた。
「ちょっ、蛮ちゃん!?」
まずいよダメダメっ!!俺らもうお金ないじゃんっ!!
と、切実な表情で蛮の腕を引っ張る。
振り返った蛮の瞳には拒否の念を浮かんでおり、それを見た銀次は泣きたくなった。
そろそろちゃんとしたご飯が食べたい……!!
ここ一週間、ろくな食事を取っていない。
コンビニやスーパーのごみを漁ったり、誰かが恵んだであろうチキンを犬から奪ったりと、まともな飯にはありつけていなかった。
普段はプライドが高くてかっこいい蛮ちゃんが、この時ばかりはホームレス顔負けな手段を使ってご飯を奪取するから、銀次はいつも悲しく思っていた。
「ヘヴンさんが電話でも言ってたじゃない。今回の仕事はかなりデカイから、当分金に困らずに済むって!!」
店の外で必死にすがりついてくる銀次に、蛮は深い溜め息を吐き、店内からこちらをじっと見つめているメンバーをちらりと眺めた。
工藤卑弥呼に、冬木士度、赤屍蔵人に、風鳥院花月。
このメンバーで組んだ仕事で、無事に遂行出来た奪還は何一つとしてない。
蛮はこめかみをピクピク言わせ、すがりつく銀次を見下ろし冷静に考えた。
確かに、このままでは人としてダメな気はする。
路上生活も、確実に人間性を破壊していっているわけで………。
そこまで考えて、蛮はふと銀次との約束を思い出す。
『マンション借りてさ、二人で優雅に暮らしたいよね!!』
そう屈託なく笑い、蛮も確かにそれに頷いた。
ちっ。
軽く舌打ちを落とし、至極嫌そうに頭をガシガシと掻くと蛮は眉間に深いシワを寄せ、店内のメンバーをキッと睨んだ。
「てめぇら足引っ張ったらぜってー許さないからな!!」
血が滲みそうなほどに拳を握りしめ、本当に嫌そうに叫んだ蛮に卑弥呼がうんざりとため息を返す。
蔵人は薄気味の悪い笑みを切れ長の瞳にたたえ、士度は蛮を睨み花月が銀次にニコニコと手を振った。
これからやって来る壮絶な運命があるとも知らずに、六人はヘヴンの持ってきた依頼を引き受けるのだった。
→
次へ
[
戻る
]
[
TOPへ
]
[
しおり
]
カスタマイズ
©フォレストページ