ゲットバッカーズ〜dream the world〜

□記憶の破片を取り戻せD
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この施設の中で、博士…――林川の言うことは絶対だ。


再び銀次に向かって行こうとしていたシックスは、スピーカーから零れた林川の声にビクリと動きを止めた。


『シックス、お前はしばらく休んでいろ。後はナインに行動させる』


プツリ。


言い終わるなり切れた音声。


シックスは奥歯を噛みしめ、ギリギリと鳴らした。


つまり、シックスは今後の干渉を禁じられ、ナインだけが動けと言っているのだ。


「な……によ、今の。よわっちょろのナインってやつに全部殺らせるってわけ!?」


「そんなの……俺、出来ないよ蛮ちゃん」


ナンバーの一番低いナイン。


今までの経験からして、この状況は正に弱い者虐めのようなものになる。


嫌がる銀次に、蛮がぼやく。


「奴さんは待ってはくれないみたいだぜ……」


戸惑う三人と、青ざめるシックスとの間。


今まで人形のように立ち尽くしていたナインが、音もなく進み出た。


「ナイン……!!」


シックスが切羽詰まった様子でナインを呼んだ。


だが、当のナインはシックスをチラリと一瞥しただけで何の返事もせず、無言を貫く。


「………」


闘いを前にしていると言うのに、ナインはまるで何も感じてはいないようだった。


シックスからすぐに目を逸らし、前に向き直ると息をひそめる銀次たちと対峙する。


とたん、シックスが銀次たちに叫ぶ。


「……っ、アンタたち、今すぐここから逃げてくれ!」


何かを恐れるような、そんなシックスの悲痛な表情。


蛮たちは突然のことに更に戸惑い、ついで、ナインの動きに気付くと背筋がぞっとするのを感じた。


ス……ッと、一歩を踏み出したナインを目で追っていた。


しかし、瞬きをしたその一瞬でナインは銀次の目の前に迫っている。


「え……、……――っ!?」


腹部に、酷い鈍痛。


吐き気すら覚える痛みに、銀次はグッと目を見開き喘いだ。


壁に叩きつけられるように蹴り飛ばされ、銀次はその場にうずくまった。


「銀次!!」


驚愕に叫ぶ蛮と、あまりのことに思考が止まる卑弥呼。


シックスだけは焦りを見せて、動けないまま叫び続けた。


「アンタら早く逃げろ!!……っナイン、お前はっ……―――」


『シックス、黙っていろ』


「……!!林川……っ」


『さあ……思う存分、力を放つが良い……ナイン』





 
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