ゲットバッカーズ〜dream the world〜

□記憶の破片を取り戻せF
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思い出したら、バカみたいに林川に従っていた自分を殺したくなった。


関係ない人間を殺しかけた。


シックスを……ずっと自分を心配してくれていたアキラを殺しかけてしまった。


全部、アイツのせいだ……!!


走り出した伊月の後ろを蛮たちが着いてきていた。


早く終わらせて、アキラの元に帰る。


伊月はまっすぐ林川の居る場所まで走り抜け、風に乗るように走った。


いや、文字通り風に乗った。


ヒュゥ――ッ………


『夏目流風術第惨の弌、微風(ソヨカゼ)』


大気中の風を操り身を浮かせる力。


伊月は自然と同化し、力を操ることが出来る夏目の末裔だ。


ある意味最強の一族の娘。


それが何故こんな場所で実験体になっていたのか……考えなくても答は明白。


全ては林川が仕組んだこと。


目の前が怒りで歪む。


飛び込む全ての景色が真っ白な施設の中、伊月はついにひとつの部屋へとたどり着いた。


憎き仇の居る部屋。


血が沸騰するように怒りに目眩を覚えながら、伊月はその部屋をぶっ壊した。


「来てやったわよ、林川。貴様の首、頂戴させてもらうっ」


ギラギラと燃えたぎる伊月の瞳。


夏目一族特有の混ざり気のない深い漆黒の瞳が、大量のモニターが散列する部屋にひとり佇む林川を射抜いた。


「本当にここまで来るとはな。やはりお前は素晴らしい!!さあ、共に世界を支配しようじゃないかっ」


「ほざけ!!貴様の愚かな戯言に付き合う気はない!お前が……っ!!お前が私の家族を殺したくせにっっ」


低く放たれた怒号。


追い付いた蛮たちは息を飲んだ。


「林川のやつ、あの娘の家族を……っ!?」


「みたいだな。そんで記憶を奪って何かしようとしてたってか?胸糞悪ィ話だなオイ」


「許せないよ、そんなの……!!」


唇を噛み締める銀次に頷き、卑弥呼もまた悲しげに伊月の震える背中を見つめた。


林川は飄々と笑い、悪びれもなく伊月をスッと目を細めて見る。


「私のこの実験には、お前ひとりで良かったのだよ。だから、要らない者を全て排除したのみ……」


「関係ない人間を皆殺しにしてまでか!?ふざけるなっ!貴様のせいで、私の一族はおろか、親しい一族もみな滅んだんだろうがっ」





 
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