白銀の魂
□美人なのにもったいない人間て居るじゃない?アレってどうよ 第三話
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「見逃してやってもらえませんかねぇ?ほら、彼女もう放っといても死んじゃいそうだしさぁ」
「引き渡せ」
「……だよな」
はあ。
と溜め息をつき、銀時は背中にしょいこんだ女をちらりと見た。
自分とはまったく関わりのない、この得体の知れない女と。
まだまだ未来も楽しみもある自分の命と。
その両方を天秤にかけたなら、当然、自分の命の方がはるかに重く下がってみえる。
「まあ、俺は俺が大事だしな」
と、独りごちて。
銀時は黒ずくめの男たちに笑ってみせた。
「はいはい、返しますよ〜」
じり、と一歩踏み出し、土左衛門女を背中から引き剥がす。
黒ずくめの男たちはそれを黙って見ていたが、次の瞬間動き出した。
「って、明らかに怪しい人間に素直に従うかよバカヤローっ!!」
と、突然走り出した銀時。
土左衛門を落とさないように担ぎ直し、来た道を一目散に駆け戻る。
「逃がさん」
なんて不気味な声で告げられて、追いかけられて、銀時は内心叫んでいた。
やっぱ渡しときゃ良かった!!
「おいおいおい、マジで洒落になんねぇぞコレェエエ!!」
人ひとりを背負いながら逃げるには限界がある。
むしろ不利な上に無謀。
あっという間に追い付かれ、刀やら妙な糸やらで攻撃を放たれ、それを避けながらまた逃げるという無茶苦茶な逃走を繰り広げ、銀時はついに叫んだ。
「良い加減諦めてくれぇえええっ」
「……―――」
ゾワ……
銀時が何回めかの刀を避けたその時。
辺りに急に立ち込めた悪寒に息を飲んだ。
「ちっ、マーダーが目を覚ましやがった!!」
舌打ちをかます彼らに、銀時は悪寒よりもツッコミを優先してしまう。
「は?マーダー?ママってか?ナニ、お前らマザコンなわけ?―――っな!?」
「処理……殺ス……殲滅」
急に耳もとで聞こえたその声に、銀時は言葉を失う。
瞬間、背中から消えた体温と重量に目をひんむいた。
「な、バカヤロウ!!動くなっ」
と、それを止めようと手を伸ばした銀時。
けれど、銀時の手は空を切るばかりでそれを掴めはしなかった。
そして、それは一瞬の出来事だった。
「マーダーを殺せ!!な…ぐはっ…!」
「二手に回れば!足を切断しろ――……!?」
「まだ動けたのか!?がっ……はっ……!」