白銀の魂
□いいか、世の思春期の兄ちゃんと姉ちゃんども。新しく家族が出来ましたって言われても絶望なんかするんじゃねえ。 第四話
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「………」
「……………」
「…………………」
「…………………………」
見つめ合うこと数分。
新八は神楽の乱入を抑えるべく必死で襖を閉めていた。
プリンで釣ったり、煮干しで釣ったり、酢昆布で釣ったり……。
とにかく、今は邪魔してはいけないとばかりに神楽を銀時の側から引き離していた。
否、あの゙彼女゙から遠ざけていた。
「………」
「…………」
何やってんだよ銀さん!!
良いから何か話せよマジで!
神楽ちゃん抑え込めるのもそろそろ限界なんだからな!?
内心そんなツッコミを入れる新八をよそに、銀時ど彼女゙は畳の間で向かい合う形で座り込んでいる。
というより、無理やり起き上がろうとした女を、銀時が医者からもらってきた麻酔と鎮静剤で布団に押し付けたが失敗し、立ち上がるとまではいかないまでもその手前の膝を付いた格好の女と……と言ったほうが正しい。
正座する銀時に、方膝を付いて立ち上がりも座りもしない女。
なんとも可笑しな絵図面である。
「私もレディとエンジョイしたいネ!銀ちゃんばっかりずるいアル」
プリンも煮干しも酢昆布も、ついでに銀時のイチゴアイスまで食べ尽くした神楽はとうとう襖に手を掛けた。
「ぁあ!?ちょっと待って神楽ちゃん!今はダメだ、今はっ!エンジョイどころかデッド・オア・アライブで天国見ちゃうから!!」
ガタガタガタッ!!
襖の向こうの騒ぎを聞きながら、銀時は耳に小指を突っ込みほじくりまわす。
「っとに、うるせぇ奴らだよコンチキショ――」
「私が居るから、だろう」
文句を言う銀時に、女がここに来て初めて言葉を発した。
誰も信じて居ないような、そんな冷たい声。
銀時は深い深い深ーいため息を吐くと、耳糞をピンっと襖に投げつけた。
「悲しいことに、これが日常だ。あんたが居ても居なくても、な」
面倒くさげにそう言えば、女の人形のような表情が少しだけ変化する。
居ても居なくても同じ……―――
組織にとって、女の立場はいつもそうだった。
任務がある時だけあれやこれや言い付けて、終わればまた空気のように扱われる日々。
スッと、女の目が暗くなったのに気付いた銀時は、軽く目を細める。
時々見せる゙この目゙が、銀時はひどく気になっていた。
瞳は寂しいと言っているのに、表情が伴わない。